介護の基礎知識 <01>

介護情報誌ハナさんVol.1 1999年01月掲載 特集01

年をとると"もの"が飲み込みにくくなる!? ー嚥下障害を見抜くー

 年をとると、体力がだんだんと衰え、身体のあちらこちらが弱ってきます。耳が遠くなったり、目が悪くなったりしますね。「食べる」ことも例外ではありません。老化が原因と思われていたお年寄りの食欲不振は、実は上手くものが飲み込めないために起こることがあるのです。これを「嚥下障害」(飲み込むことの障害)といいます。

 咽は、「息をする」「声を出す」そして「ものを飲み込む」という3つの運動を行う交差点のようなところです。年をとると足腰が弱ってくるのと同じように、交差点である咽も交通整理が難しくなってきます。そのせいで、胃に送り込まれるはずの食物が肺に入ってしまい、生命にかかわるような誤嚥性肺炎を引き起こすこともあります。また、慢性的な脱水・低栄養状態(尿が減り、ぐったりしてくる)に陥るケースも少なくありません。けれども、外からはわからない身体のなかのことであり、自分で症状を感じることができないお年寄りが多いのです。「嚥下障害」を起こしていても気づかず、「食べられない」→「食べたくない(食欲がない)」となるわけです。しかし、お年寄りをよく観察することで症状に早く気づき、予防することができます。そのためには、介護する方の優しさと気配り、そして介護の知識が必要となってきます。

 また食事には、栄養を摂るだけでなく「味わう」という楽しみがあります。特に介護を必要とするお年寄りは行動範囲も狭く、食事が一日の最大の楽しみということも多いのでは?「食べたい」という気持ちがあれば、「美味しい食事を味わうこと」を目標に、まだ使える機能を訓練していくこともできます。機能は使わなければだんだんと衰えますが、反対に訓練することで回復する可能性もあります。食べる楽しみを思い出したお年寄りがベットから起き上がり、オムツをはずすまでに回復した例はいくつもあります。一人ひとりの食べる力(摂取能力)にあった食事の工夫や介護の仕方がとても重要なのです。

 今回は「嚥下障害」にいち早く取り組んでこられた才藤栄一先生(藤田保健衛生大学教授・医学博士)に、家庭でできる症状のチェックや食事の工夫などを伺いました。

 

嚥下障害を見抜く

 お年寄りが喜ぶ食事を提供するためには、まず一人ひとりの食べる力(摂取能力)を確かめることが大切です。使える機能を上手に生かし、食べる楽しみを味わってもらいましょう。

1.まずはチェック!
疑いをもつことからはじめましょう。

A.「ゴックン」テスト(反覆唾液嚥下テスト)

ゴックン!外からはわかりにくい嚥下障害を
“反覆唾液嚥下テスト”でチェックしょう。

●「ゴックン」と唾液を繰り返し飲み込んでもらいます。
唾液の少ない場合は、舌の上にストローで水を数滴落としてあげましょう。
30秒間で3回以上飲み込むことができれば、特に問題はないでしょう。
チューブなどで栄養補給をしている場合でも、「ゴックン」が1回以上確認できれば、口から食物を摂取できる可能性があります。

B .毎日の生活をチェック(臨床的所見)

日頃の状態を確認してください。

印がある場合は「誤嚥」(胃に入るべきものが肺に入ってしまう)している可能性が高いので、専門医に相談しましょう。また印が多い場合も注意が必要です。

肺炎・発熱を繰り返している
食事中や食後にむせたり、咳込むことが多い
食後、よく声が変わる(ゼロゼロした声)
脱水・低栄養状態である
(尿が少なく、ぐったりしている)
食事を嫌がったり、拒んだりする
食事をするのに1時間以上かかる
口に食物が残っている
夜間よく咳込む

2.食べやすさ、飲み込みやすさを工夫して、
誤嚥を防ぎましょう。

 食べやすく飲み込みやすい食事のポイントは、無意識のうちに口の中で食物を噛み砕き飲み込みやすい大きさにすることです。口から咽にスムーズに運ばれ、「誤嚥」(胃に入るべきものが肺に入ってしまう)しないことが最も大切です。個人差はありますが、ティースプーン1杯(約3〜4ml)が飲み込みやすい大きさです。

 また、「食べやすいよう、食材の大きさを揃える」「刻んだ食材は、まとまりやすいようトロミをつける」などの工夫をしましょう。

 「ゼラチン」は口の中で滑りやすく、また食材そのものの味を生かせる、嚥下食として最適な食品です。上手に利用しましょう。

 味は食欲を起こさせるためにも、はっきりつけましょう。塩分の気になる方は表面だけに味をつけたり、糖分の気になる場合は人口甘味料を使うなどの工夫も必要です。 嚥下障害者の場合、温度は50度程度に温め、甘みを加えると飲み込みやすくなります。

<食べやすいもの>        
大きさ・密度が同じ         
適度なトロミがあってバラバラになりにくい
口や咽を通るときに形が変わりやすい 
べたついていない(粘膜につきにくい)  

<食べにくいもの>
●固くて、形が崩れない
●パサパサして、まとまりにくい
●固体と液体など、異なる性質のものが混ざっている(例:固形の具が入った汁物)
●粘り(べたつき)がある(トロミと粘りは違います)

飲み込みにくいもの

才藤栄一 医学博士

 

才藤栄一 医学博士
藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座教授。
日本摂取・嚥下リハビリテーション学会理事などの社会活動の他、
『JJNスペシャル摂取・嚥下リハビリテーションマニュアル』など著書多数。



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