介護の基礎知識 <04>

介護情報誌ハナさんVol.4 2000年05月掲載 特集04

脱水症を防ごう! 〜早期発見と水分補給のコツ〜

 ここ数日、急に気温が高くなりました。桃太郎さんは昨日から食欲がなく、元気がありません。一人で行っていたトイレも、誰かに体を支えてもらわなければ行けなくなりました。額に触れてみると、熱があるようです。病院で診てもらうと、脱水症と診断されました。脱水症の症状

 特に原因もないのにお年寄りの元気がなくなってきたと思ったら、まず脱水症を疑ってみましょう。脱水症は、「元気がなくなる」ことから始まります。そして「発熱」「皮膚の乾燥」「尿量の減少」などがみられ、なかには「吐き気」を訴える人もいます。

 脱水症をそのままにしておくと、だんだんうつらうつらしはじめて(傾眠状態)、さらにすすむと、うわ言をいったり、騒いだり(せん妄状態)、幻覚が出てきたりします。発病して数日で亡くなることさえある怖い病気です。

 水は命の源です。たっぷりと水分をとることで脱水症は防ぐことができます。その早期発見と予防のポイントを竹内孝仁先生(日本医科大学教授・医学博士)に伺いました。

●植物は水なしでは枯れてしまいます。同じことが人間にもいえます。特に高齢者には水分補給がかかせません。

水分たっぷりの植物  水分不足の植物

 

脇の下で脱水症をチェック脇の下で脱水症をチェック!

 皮膚の乾燥を知るには、脇の下に触れてみることです。

 なんとなく元気がないようならば、額に手を当てて「熱をはかろうね」といいながら、脇の下を触ってみます。脇の下がツルツルッとすべった感じになっているときは皮膚が乾燥している証拠です。水分が足りていれば、湿り気があるので、ちょっとひっかかるような感じがします。これは、脇の下で脱水症かどうかを見分ける技術です。

 

1日最低1,300mlの水分を摂取しよう1日最低1,300mlの水分を摂取しよう

 私たちは尿や便のほか、皮膚や肺からも水分を排泄(不感蒸泄)しています。汗をかき、呼吸することで、身体の中に溜まっている熱を体外に捨て、体温をコントロールしているのです。水分が不足して熱を捨てることができないと、熱中症を起こしてしまいます。

 それでは、どのようにして水分を補給しているのでしょうか。まず、細胞が燃えてエネルギーが生産されると、燃焼水が発生します。また、ご飯やおかずなどの固形の食事にも水分が含まれています。それでも足りない分は、飲水(液体)としてとることになります。水の出入り

 高齢者は1日最低1,300ml、できれば1,500mlを液体として補給しなければなりません。しかし、その日の気温や活動状態などで、1,500mlとっていても脱水症状を起こす場合があります。数字はあくまでも目安です。水分摂取の必要性を理解し、体調の変化にいち早く対応することが重要です。

*桃太郎さんは、家族の発見が早かったため、重症に陥らずにすみました。若いころからあまり水を飲みませんでしたが、水分不足の恐ろしさを経験して以来、寿司屋の大きな湯飲みにたっぷりのお茶を朝・昼・夕の食事のたびに飲んでいます。そして10時と3時にも牛乳やジュースなどで水分をしっかりとることにしました。こうして脱水症の予防を心がけています。

 

水(体液)の4つの働き

 私たちの身体の成分は、60%が水です。そのうち2/3が細胞のなかに、残りの1/3が細胞の外にあります。この水分のバランスを保って私たちは生きています。

 そして水は、「エネルギーの代謝」「細胞のための快適な環境づくり」「エネルギー源の運搬」「老廃物の運搬」という働きをしています。

 

なぜ、高齢になると水分をしっかりとったほうがいいのか

1.筋肉が少ない=体内の水分が少ない

 体内に蓄えられている水分を必要なときに出してくれる組織は、主に筋肉です。細胞を燃やして燃焼水という水分を作ります。ですから、筋肉の少ない高齢者や乳児は、水の補給が止まると、すぐに脱水症状を起こしてしまうのです。

2.腎機能が低い=老廃物を捨てずらい

 腎機能が低くなると、同じ量の老廃物(エネルギーの燃えカス)を捨てるのにも、健康成人よりも多くの水分量(=尿)が必要です。おむつ交換が大変だからといって水を飲むのを控えると、老廃物を捨てきれずに尿毒症を起こしてしまう危険があります。

3.感覚機能の低下=喉の乾きを感じに

 喉の乾きをあまり感じないと、水を飲もうという意欲も起きません。

 また、生活習慣で若いころからあまり水を飲まなかった人は、特に脱水症状を起こしやすい傾向にあります。1日の必要摂取量をしっかりとる習慣をつけましょう。

 

“とろみ”のある水を作ろう“とろみ”のある水を作ろう

 水やお茶でむせるのは、喉の嚥下反射(ものを飲み込んだときの反応)が弱っている人です。水は特にむせやすいので、こういう場合は、“とろみ”のある水を作りましょう。粉末の寒天やゼラチンで作れます。「作り方」に書いてある分量よりも多めの水で溶くのがポイントです。飲み込みやすい硬さはそれぞれ異なります。その人にあった硬さを見つけましょう。また好みでオレンジジュースやお茶で味付するのもよいでしょう。ペロペロと食べる感じですが、胃に入れば水分としてしっかり吸収されます。

 また、“とろみ”をつけるための調整食品や飲み込みやすいゼリータイプの食品なども上手にとり入れていきましょう。

水はつねにコップで飲むものと思い込まないで、いろいろ工夫して試してみることが大切です。

脱水症の危険のある症状

注意)腎臓病や心臓病で水分制限が必要な場合は、主治医の指示に従ってください。

竹内孝仁 医学博士

 

竹内孝仁 医学博士
日本医科大学リハビリテーション科教授。1966年日本医科大学卒業。
1973年から特別養護老人ホーム、1980年代から在宅高齢者のケア全般にかかわる。
『医療は「生活」に出会えるか』『介護基礎学』など著書多数。



Copyright by PureCommunications,Inc. 1999〜2008