「褥瘡(床ずれ)を治したり、悪化させないためには体位交換が必要だ」と思い込んではいませんか?病院の集中治療室に入っているような急性期の場合、体位交換は必要でしょう。けれども、一般病棟の患者や在宅で療養する人の場合、体位交換は基本的には必要ないのです。
兵庫県のある公立病院の脳外科病棟では、患者を昼間できるだけ起こして座らせ、夜間の体位交換をやめてみました。すると、睡眠を中断されなくなった患者は、夜ぐっすりと眠るようになり、昼間ボーっとすることもなくなりました。また、心配された褥瘡の発生もありませんでした。
この事例を聞いた北海道の病院では、夜間、患者の身体の動きを観察しました。そして、体位交換を行っている患者たちが、右に左にと自分で寝返りをうっていることを確認しました。体位交換を行うことに意味がないことがわかったのです。
褥瘡の治療・予防には、しっかりと栄養をとって、昼間できるだけ身体を起こしておくことが大切です。そのための基礎知識を竹内孝仁先生(日本医科大学教授・医学博士)に伺いました。
1日に必要なエネルギー量をしっかり摂取していますか?運動量や体格によって変わりますが、一般にデイサービスに通える人で1日 1,500〜1,600kcal、寝たきりの場合でも1日 1,300kcalのエネルギーが必要です。
特に褥瘡(床ずれ)がある場合は、化膿している部分が回復しやすいよう、身体の細胞や組織の主成分となるたんぱく質を多く含む食品をとるようにします。なお、他の疾病で食事指導を受けている場合は、それに従ってください。
ところで、食事の都度、エネルギーや栄養素の量を計算するのは大変めんどうです。しかし、主食や主なおかずのエネルギー量がわかれば、およその目安をつけることができます。同じご飯1杯でも、調理の仕方でエネルギー量が異なることも覚えておきましょう(表1)。
最近では、栄養成分やエネルギー量を明記した加工食品が多く出ています。そういった表示を見るように心がけていると、自然に覚えてきます。また、料理本も参考になります。どうしても食事管理がむずかしい場合は、給食サービスを取り入れるのも一つの方法です。病院や保健センターの栄養士からアドバイスを受けるのもいいでしょう。

お尻と足の裏には体重を支えるヒミツがある褥瘡は、皮下組織(脂肪や筋肉)のないところや骨の出ているところを長時間圧迫することでできます。ですから反対の状態、つまり脂肪や筋肉の多いところに体重をかければ防げるわけです。
では、それは身体のどの部分でしょうか?お尻(殿部から大腿後面にかけて)には、人間の身体の中で最も大きい大腿筋という筋肉があり、さらに厚い皮下脂肪がついていて、体重をしっかり受けとめられるようにできています(図1)。また、足の裏には脂肪がぎっしりと詰まった円柱がたくさんあって、それが体重を吸収し分散する働きをしています(図2)。
したがって、「お尻に体重をかける=座る」あるいは「足の裏で体重を支える=立つ」状態が褥瘡を防ぐ理想的な体勢だということになります。
目的を作って、1日3時間は座ろう「座る」ことには、褥瘡の予防のほか、血圧や脈拍、呼吸を安定させるといった多くの利点があります。竹内先生によれば、1日3時間、座る生活を続けると効果がみられるということでした。
しかし、目的もなく、ただ座っているのは辛いものです。食事のときはいすに腰かける、テレビを見るときは起き上がる、車いすで散歩するなど、起きるきっかけを作りましょう。
ケアサービスに体位交換が組まれているのなら、それが適切であるかどうか、もう一度、サービス提供者と話し合ってみましょう。まず、「栄養(食生活)」「 処置状況」「 座位時間の確保」「 家族関係(介護者の状況)」をきちんとアセスメント(評価)してもらいます。そして、ホームヘルパーが来たときにベッドから起きる、デイサービスに通うなど、起きる機会を増やす方向で検討します。
また、介護者の負担を減らすため、電動ベッドや車いすなどの介護用品を上手に取り入れることも大切です。ただし電動ベッドの場合、ベッドを起こすだけでは不十分です。きちんと殿部に体重がかかるよう、横向きに座るようにします(図3)。
