リハビリテーションの目的は、障害を克服し元どおりの生活に戻ることです。手足の回復訓練だけを目的にするのではありません。先天的な障害をもっている人の場合でも、普通の人と同じような生活を獲得することです。
ベッドであまりに長い時間安静にしていると、足腰も手も硬くなり、全身が弱り、やがて動けなくなってしまいます。これを廃用症候群といい、使わない機能や能力の衰えを意味します。リハビリは、なるべく早く始めたほうがよく、早ければ早いほど効果が上がります。また、入院中、病院で行えば終わりというものではありません。自宅に戻ってからこそが本番です。朝起きたら寝巻きからふだん着に着替える、身だしなみを整えるなど普通の生活をすることがリハビリの第一歩です。
脳卒中などで倒れて後遺症が残ってしまった場合でも、人生が終わったわけではありません。目を外に向け、積極的に出かけましょう。通所リハビリなどの施設に通うことから始めてもよいですし、買い物や旅行の楽しみでもよいのです。社会や仲間と関わるなかで、喜びも生きがいも得られます。障害により失ったものを一つひとつ数えるのではなく、リハビリを進めることで、残った機能を最大限に引き出し、自分らしい生活を取り戻すことが大切です。今回は、日常生活の中で行えるリハビリについて竹内孝仁先生(日本医科大学教授)に伺いました。
リハビリテーションというと、身体的な機能回復訓練のみを思い浮かべがちです。しかし、生活を回復させるためには、ADL(日常生活動作)の自立が課題となり、その基盤となるのは「体力」です。体力の維持・向上には、しっかり栄養をつけることはもちろん、より活動的な状態がよいのです。家の中では離床を基本とし、その時間が増えるほど体力もアップしてきます。しかし、家の中での生活のみでは活動量が少ないため、家の外での生活、できれば体操や体を使ったゲームやレクリエーション活動への参加が必要になってきます。
体力を基盤に、その上に成り立つ「身体的機能」「心理(意欲)」「環境」といった能力障害に対するリハビリテーションの中では、問題となりやすいのが「意欲」です。意欲低下の原因は孤独や孤立であることが多く、社会への参加や他人との交流により最も良い効果がみられます。実際に会食したり、外出することで、食事や身だしなみの自立が得られる例は多いようです。これらは、環境要素のうちの人的環境を整えていくことにもなります。
「身体的機能」のリハビリテーションに関しては、多くの場合「廃用症候群」(使わないことによる機能の衰え)の予防が中心となります。使わない機能はどんどん低下してしまうので、手すりを付けたりトイレの改造をするなど自立生活のしやすい物的環境を整え、ADLを維持していくことが大切です。

長い間寝ていた人を急に座らせると、立ちくらみを起こすこともあります。しかし、在宅で過ごしている場合、介助さえあればほとんどの人が座れるようになります。座ることは、褥瘡予防のほか、誤嚥防止、血圧や脈拍・呼吸を安定させるといった多くの利点があります。

自分で食べることは、口に入れる食べ物の量とタイミングを自ら選択していく主体的な行為です。食べやすく調理する、使いやすい食器を選ぶなど、自分の力で食べられるように工夫しましょう。また、同じ食卓を家族や仲間と囲むことは、人との触れ合いの場をつくることになり、心理的(意欲)なリハビリにもつながります。

寝たきりでおむつを使用している人でも、座位が保てれば、ポータブルトイレが使えるようになります。座位は腹部臓器を下垂させて腹圧を上昇させるので、寝たままの状態に比べて排泄がスムースになります。便意や尿意が戻れば、おむつの必要がなくなります。排泄は着ているものの上げ下げや、お尻を拭くなどいくつもの動作を必要とします。しかし、トイレだけは自分でしたいと思う人も多いはずです。

転倒を防ぐため、車椅子で通れるようにするために、段差をなくす、手すりを取り付けるなど環境を整えることも必要です。いろいろな道具を利用したり工夫しながら、本人の出来ることを増やしていきます。原則は、本人の自立を促すことです。

