介護情報誌ハナさんVol.15 2003年04月掲載 特集15


介護の基礎知識 <15>

介護情報誌ハナさんVol.15 2003年04月掲載 特集15

命の水をたっぷり飲もう!

 ピチピチっとした弾力ある赤ちゃんの肌。その奥にはたっぷりの水分が含まれています。ところが、成長と共に骨や筋肉が発達してくると、体の中に占める水分の割合はその分減少してくるのです。そして発育が止まると、水分同様、骨や筋肉の割合も減少し脂質の割合が高くなる傾向にあります(図1)。また、子供でも大人でも必要な水分量が足りなくなれば脱水症を起こします。なかでも、水分の割合が少なくなっているお年寄りは、脱水症になりやすくダメージも大きいので注意が必要です。

 私たちは一日に何杯かの飲み物を飲みます。そして、食べ物の中にも水分は含まれています。こうして食べたり、飲んだりすることで、人間は体に必要な水分を補給しているのです。手術の後や加齢などによって喉の渇きを感じづらくなっていたり、水を飲もうとする意欲が起きないときは要注意です。少しずつでも、こまめに飲むように心がけましょう。また、トイレに行くのが面倒くさいからといって水分を控えることも禁物です。水は体の中で様々な働きをしているのです。今回は体の中の水分変化とその働きについて、女子栄養大学 栄養クリニック部長の工藤秀機先生に伺いました。

 

 人間の体は、「体液」(水)と、筋肉・骨・脂肪などの「固形成分」でできています。体液は成人の場合、体のおよそ60%を占め、細胞の中に40%、残りの20%は細胞の外(細胞と細胞の間や血液の中)にあります(図2)。細胞外の体液は年を重ねても、その量に大きな変化はありませんが、細胞内の体液は少しずつ減少します(図3)。また、加齢と共に細胞の数も減少するので、細胞が維持できる体液の量は全体的に減少してしまうのです(図4)。

 その上、水分を飲む機会が少なかったり、大量に汗をかくなど体が必要としている水分のバランスが崩れると、細胞外の体液も減少し脱水症になってしまうのです(図5、6)。脱水症になるとどうなってしまうのでしょうか。例えば、水がたっぷりあれば、汚れたコップを洗い流すことができます。しかし、十分な水がなければきれいに洗うことはできません。人の体も同じように、水分が十分に供給されなければ、体の中の不要なものを排泄するなどの機能は働かなくなってしまうのです。

加齢による変化 人間の体を作るもの

加齢による細胞の変化

水の働き

 体液は、老廃物を排泄したり(図7)、便を軟らかくしたり(図8)、体温の調節(図9)やエネルギーの運搬(図10)などたくさんの働きをしています。

 1日に必要な水分量は、最低でも1,300mlといわれています。しかし、体調や環境の変化によっては、より多くの水分を必要とします。汗を多くかいたり活動量の多いとき、下痢・嘔吐をしたときも、普段より多く水分を失っています。また、発熱しているときも熱で水分がどんどん蒸発しているので、このようなときは数字にとらわれずしっかり水分を補給しましょう。但し、心臓病や腎臓病で水分制限が必要な場合は、主治医の指示に従ってください。

 普段は水やお茶、牛乳などでよいのですが、大量に汗をかいたときや下痢・嘔吐のときには、体液と同じ成分(様々な電解質)を含んでいて体への吸収が早い、ミネラルウォーターやスポーツドリンクがよいでしょう。ぐったりしているような緊急時には、点滴を打たないと手遅れになってしまう場合もあるので大至急病院へ。脱水症は、ときに命をも奪ってしまうこともあるので、決して侮ってはいけません。大切な命の水が枯れないように、日頃からしっかり水分補給を心がけましょう。

 

工藤秀機 医学博士

 

工藤秀機 医学博士
東京医科歯科大学医学部卒業。 東京医科歯科大学第一内科講師、都立墨東病院輸血科部長を経て、2001年より女子栄養大学教授、同栄養クリニック部長。
臨床栄養学、内科学、血液・輸血学を専門分野・研究課題とする。



Copyright by PureCommunications,Inc. 1999〜2008