たっぷり飲んで、しっかり食べよう!
日頃の体調を整えるためには、高齢になるほどたっぷりの水分補給とバランスのとれた食事をとることが大切です。体の機能を働かせ脱水症を防ぐためにも、1日に最低でも1,300mlを目標に水分をとりたいものです。また、運動量の少ない人でも1日におよそ1,300kcalのエネルギーが必要です。噛んだり、飲み込んだりする機能が低下してくると、水分量も食事の量も減少してしまいがちですが、調理の工夫をすることでカバーできますし、さらに治療やリハビリによって改善するケースも多くあります。
特に飲み込み困難な場合、食事を食べやすく調整するための素材は多数ありますが、それぞれ特徴があり調理方法も異なります。また、相性の良い食材との組み合わせで、おいしく飲み込みやすい介護食になります。素材の選び方や火加減、調味料のバランスなどで普段の料理でも仕上がりが異なるように、食材と「粘度を調整するための素材」の組み合わせによって、味や口あたりなども異なってくるのです。
基本的には、軟らかく、まとまりのあるもの、なめらかなものが、食べやすく・飲み込みやすいものですが、特に対象者の飲み込みの状態に応じて適切な濃度にするための調整が必要です。安全においしく食事をするためには、その人の状態に応じた食形態で食事を提供することが大切であり、摂食方法の工夫も必要となります。今回は増田邦子先生(特別養護老人ホーム菅の里 管理栄養士)に、飲み込み困難な人のための粘度調整素材の特徴と口ざわりや喉ごしをよくする調理方法を紹介していただきます。
ものを飲み込むときにむせることが多い人は、飲み込む機能が低下している場合があります。何でもない水やお茶はサラサラとしていて飲み込みづらいものです。また、具を刻んで入れた味噌汁なども飲み込みづらいものの一つです。そこで今回は、摂取困難なときのために、舌でつぶせる程度のやわらかゼリーやとろみ状の食形態を「栄養補給」と「水分補給」を考慮しながらご紹介します。食べているとき、一口ずつ「ゴックン」と飲み込めているかなどをよく観察し、その時の状態に合わせて適切な濃度に調整してください。
噛むことや飲み込むことに困難を感じるようになると、だんだんと食べるものに偏りが出てしまいます。いろいろなものが食べられるように、調理の工夫を凝らしましょう。食欲が低下した時は無理強いせず、少量で栄養価の高い栄養補助食品を併用することも有用です。食欲不振でエネルギーが足りなくなれば、体はますます動かなくなり、免疫力も低下するなど体に様々な悪影響を及ぼします。体重の変化は栄養状態を把握する上での大切な目安となるので、日頃から気にかけましょう。
飲み込みやすい食物
●プリン状 :プリン、ババロア、ムースなど
●ゼリー状 :牛乳やジュースのゼリー、ヨーグルトなど
●ポタージュ状 :クリームスープ、シチューなど
●ネクター状:バナナ、ピーチ、リンゴをつぶしてドロッとさせたもの
●蒸し物 :豆腐、茶わん蒸し(山芋を入れ、粘着性をもたせる)
●すり身 :山芋、まぐろ(生)、ねぎとろなど
●粥状 :全粥、5分粥、3分粥、ミキサー粥
●乳化状 :アイスクリームなど
●凝集性(まとまり感)の小さいものは、ゼラチン、寒天、くず粉、片栗粉等で凝集性を高める
●味は無味より、味のあるもの、甘いもの
●温度は常温よりも冷たいもの
飲み込みにくく、注意する食物
●水
●弾力性のあるもの(かまぼこ、たこなど)
●塊の大きいもの
●炒り豆腐などのポロポロ、パサパサしているもの
●繊維質の多いもの(野菜類)
●ひき肉
●ごま、ピーナツ、大豆などの豆類
●のり、わかめなど口腔内に付着しやすいもの
●酸っぱいもの、辛いもの、硬いもの
でんぷん
片栗粉(じゃがいもでんぷん)は液体に対し2〜3%程度加えることでとろみがつき、くず粉(くずでんぷん)やコーンスターチ(とうもろこしでんぷん)はできあがり量に対し8%程度加えることで粘度のあるとろみ状になります。味噌汁やすまし汁、あんかけなど主に温かい料理に手軽に利用できます。


ゼラチン
主成分は牛・豚の骨や皮のコラーゲンから作られたゼラチンたんぱく質です。体温で容易に溶けるので、ゼリー寄せなど口溶けのよい料理ができます。滑らかで柔軟性があり舌でつぶすことができ、ツルリと喉ごしもよく嚥下食には最適です。しかし、硬さを安定させるのに24時間かかり、一度固まった料理も室温が高くなれば溶けやすくなるので、冷蔵庫に入れて食べる直前に出すなど温度管理が大切です。事前に水でふやかす必要のない粉ゼラチンを使うと便利です。


*口から食物がこぼれやすかったり、取り込みが難しい場合は、均質なやわらかゼリーやとろみ食を先の細い長めのスプーン、またはやわらかいボトルに吸い口を差して使うと便利です。
*舌による食物の送り込みがうまくいかない場合も、舌の奥に少量ずつ入れると、飲み込めることがあります。
寒天
天草・おごのりなどの海藻から作られる食物繊維たっぷりの素材です。時間が経っても常温では溶けませんが、濃度が高くなると硬く、口の中でバラけてしまい飲み込みにくくなってしまいます。型から出したときフルフルするくらいの軟らかさを目安にすると、ツルリと飲み込みやすくなります。棒状の角寒天と粉寒天では、同じ濃度でもできあがりの硬さが異なるので注意が必要です。通常の寒天より腰が弱く、常温でも硬くなるゼラチン風に加工されたソフト寒天などもあります。


かんたんゼリーの素
主成分は柑橘類に含まれるペクチンなどです。液状食品の量を加減し、かき混ぜて常温で5分ほど置くだけで好みの固さのゼリーになるので、手早く、手軽に作りたいときに便利です。少し酸味のあるジュースなどとの相性がよく、濃厚なスープやペースト食は、ゼリー状になりにくいこともあるので注意が必要です。温度の高いものや塩分の高いものなどに入れるとゆるくなる傾向があり、カルシウムの多い牛乳や濃厚流動食は凝集してしまい固まりにくくなることがあります。



とろみ調整食品
主成分はでんぷん、加工でんぷん、デキストリン、ガムなどの食物繊維です。市販のとろみ剤(増粘剤)は、温かいもの・冷たいものどちらにも溶けやすく、簡単にとろみがつけられます。食品によりとろみ加減が異なるので、スプーンですくい皿にたらして、広がりやたれ具合を観察し、食べる人の飲み込みの状態により好ましい濃度に調節しましょう。濃厚流動食は100ccに対し6g(2袋)を溶かし、少し時間を置くととろみがつきます。





増田邦子 管理栄養士
福岡県出身。中村学園大学家政学部卒業。
病院栄養士を経て現在、「特別養護老人ホームしゃんぐりら」に勤務。
後期高齢者の食介護支援のため「口から食べることの大切さ」を研究課題とする。