介護の基礎知識 <17>

介護情報誌ハナさんVol.17 2003年08月掲載 特集17

血管を健康に保つ秘訣

 食事でとり入れた栄養や呼吸から得た酸素は、血液によって体の隅々の細胞にまで届けられ、ここで産み出されたエネルギーが臓器や筋肉を動かしています。発生したエネルギーの燃えカスは、老廃物として再び血液によって回収されます。「なんとなく調子が悪い」「頭が冴えない」など体に不調(不定愁訴)を感じるようなとき、実はこの血液の流れが原因になっていることもあるのです。

 一般に、年をとると血圧が高くなる傾向にありますが、これは動脈硬化が進んでいるからだと考えられています。動脈硬化とは血液中の老廃物などが動脈の内側に少しずつたまり、血管の内側を狭くし、しなやかさを失った状態をいいます。血管が狭くなり、しなやかさを失うほど、血管壁には余分な圧力がかかるようになるのです。

動脈硬化が進んだ血管 「人間は血管から老いる」といわれるように、血管の健康を保つことは老化の速度を緩めることにつながります。反対に実年齢が若くても、血管に問題が起これば寿命を縮めてしまうことにもなりかねません。血管の健康には、血液の流動性が深く関与しています。血液がサラサラ流れているのか、ドロドロと流れにくくなっているのかは、私たちが口にする食物や水分、生活習慣が大きな影響を及ぼしているのです。今回は、工藤秀機先生(女子栄養大学 栄養クリニック部長)に血管を健康に保つ秘訣について伺いました。

 

朝1杯の水、夜1杯の水

 血液が流れにくくなってしまう大きな原因の一つに「水分不足」があります。体内の水分が不足すると血液もドロドロと流れにくいものになります。体外に出ていく水分量は、汗や尿、皮膚からの蒸発など、1日およそ1,300mlですから、少なくても同じ量の水分を補給しないと体の機能は十分に働くことができません。

 寝ている間は水分補給ができないため、1日の中でもっとも水分が失われます。夜中や朝に心筋梗塞や脳卒中が起こりやすいのは、就寝中に水分が失われ血液がドロドロになり血管が詰まりやすくなることもその要因の一つであると考えられます。特に動脈硬化が進行しているお年寄りは、コップ1杯の水を寝る前と朝の起きぬけに飲むことで血液はサラサラになり、脳血管障害や心疾患の予防・再発予防につながります。

 

朝1杯の水、夜1杯の水

 

1日1,300mlが水分補給の最低の目安

 体内を巡った血液は腎臓でろ過され、体内に戻り再利用されるきれいな血液と、尿として排泄される老廃物とに分離されます。水分の摂取量が少なかったり、汗などで大量に水分が失われると、老廃物を尿中に溶かす水分が不足して、血液は汚れたままドロドロと体内を流れ続けることになってしまいます。また、加齢による腎臓機能の低下で、老廃物を尿に溶かす機能が衰えてしまう場合も、同じような血液の状態になってしまいます。どちらの場合も、血液中に汚れをためないようにするには水分をたっぷり補給し、より多くの尿を出すように心がけることが大切です。

 

腎臓の働き

 

 喉の渇きを感じるときは、すでに体内の水分は不足状態です。高齢になると喉の渇きも感じにくくなるので、常に水分補給が必要です。三度の食事に加え、10時と3時にもお茶の時間を設けると自然に必要量がとれて安心です。運動、入浴、発熱、下痢、嘔吐などでも水分は失われます。1日に飲み物で、最低1,300mlの水分をとることを目安とし、その日の体調に合わせて摂取量を調整しましょう。

 

バランスの良い食事を心がける

 動脈硬化を促進させる要因として知られているコレステロールや中性脂肪は、食事でとる量よりも体内であまっているブドウ糖やアミノ酸から作られる量のほうが多いことはご存知ですか。栄養素は体の中で化学変化を起こしながら様々な働きをしています。例えば、コレステロールは細胞膜の成分として、ホルモンや脂肪の消化液である胆汁酸などの原料として、体にとってなくてはならない物質です。また、血管を作る材料でもあり、不足すれば血管は破れやすくなってしまいます。ですから、口から入るコレステロールの量など、ある一定の成分だけにこだわるよりも、できるだけ多くの食品を少しずつバランスよく食べることが健康を保つ上での理想の食事になるのです。栄養不足や栄養の偏りも問題ですが、カロリーのとりすぎや運動不足などによって、使われない栄養分が体の中にたまりすぎることも問題になります。

 

血管とコレステロール

 

サラサラの血液を維持するために、健康増進の3原則を実行する

 「老いる」とは、毛細血管(目には見ることのできないくらい細い血管)の数が減少して、十分な栄養と酸素が細胞に行き渡らなくなり、組織の機能が衰えることです。歳をとったから毛細血管が何本減るということではなく、日頃の健康管理で大きな差がでてきます。流れる血液の状態の善し悪しで、毛細血管の減少速度は変えられるのです。

 脳血管障害や心疾患の主な原因は、太い血管が破れたり詰まったりすることです。毛細血管の数が減少して、太い血管への負担が大きくなると異常事態に至るのです。流れる血液がいつもサラサラしていれば血管への負担も軽く、これこそが血管を健康に保つ秘訣であり、どうしても避けることのできない老化に伴う機能不全の軽減にもなります。そのためには、こまめな水分補給の他に、一般に健康増進の3原則といわれている、栄養・運動・休養のバランスのとれた健康的な生活習慣を身に付けることが基本です。

 

毛細血管の減少するイメージ

*すでに心臓病・腎臓病なの治療を受けている場合、臓器に負担をかけない水分量や栄養成分の摂り方が必要になりますので、服薬と同様に医師の指示をしっかり守るようにしましょう。

 

工藤秀機 医学博士

 

工藤秀機 医学博士
東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学第一内科講師、都立墨東病院輸血科部長を経て、2001年より女子栄養大学教授、同栄養クリニック部長。
臨床栄養学、内科学、血液・輸血学を専門分野・研究課題とする。



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