介護の基礎知識 <18>

介護情報誌ハナさんVol.18 2003年11月掲載 特集18

体をつくるたんぱく質

 このところ注目を浴びているアミノ酸は天然のもので500種類ほどあるそうです。その中で人間の体をつくっているのはわずか20種類、体内ではこの20種類のアミノ酸が遺伝子情報(DNA)をもとに様々な形で結合し、体を構成するたんぱく質になっています。筋肉、骨、血液、皮膚、髪の毛、爪など、人間を構成するものはすべてアミノ酸が結合したたんぱく質からつくられているのです。

 また、一つひとつのアミノ酸には独自の働きがあり、組み合わせによっても作用が異なります。スポーツ選手はパワーアップを目的に、ファッションモデルは体型維持やスキンケアのためにと、体を資本とするプロたちが積極的に有効なアミノ酸サプリメントを愛用するようになり、ダイエット効果、集中力アップ、免疫力向上と次々にアミノ酸の効果が取り上げられるようになりました。しかし、20種類すべてのアミノ酸が揃わないと体を構成するたんぱく質にはなりません。筋力アップに効果のあるアミノ酸は5種類だとしても、肝心の筋肉をつくるためには20種類すべてのアミノ酸が必要だということです。

 歳を重ねると細胞や毛細血管は次第に減少し、骨が弱くなったり、しわが増えたりもします。しかし、いくつになっても体内での代謝は繰り返され、活動するための新しい組織は入れ替わっているのです。つまり、高齢者であっても健康な体の維持・回復には、アミノ酸のたっぷり含まれた良質のたんぱく質が必要なのです。今回は、食物に含まれるアミノ酸と体をつくるたんぱく質について、工藤秀機先生(女子栄養大学 栄養クリニック部長)に伺いました。

 

質の良いたんぱく質

 人間の体をつくる20種類のアミノ酸のうち、9種類は体内で合成されます。しかし、残りの11種類は体内では全く合成されないか、合成されてもその速度が遅く需要に間に合わないものです。これらは食物から摂り入れる必要があり、必須アミノ酸と呼ばれています。必須アミノ酸を多く、しかもバランスを保って含んでいる食物の判断基準の一つに「アミノ酸スコア」があります。これは栄養価が高いほど数値が100に近く、卵、肉、魚、乳製品など動物性たんぱく質は、アミノ酸スコア100のものがほとんどです。

 

たんぱく質の消化・吸収たんぱく質の消化・吸収

 食物から得たたんぱく質は、消化する過程で最小単位であるアミノ酸に分解され、吸収されます。そして、体内で合成されたアミノ酸なども含め必要な材料がすべて揃うと、再びたんぱく質として結合され様々な役割を果たします。たんぱく質は一定の期間で、分解・排泄・補充を繰り返しているので、常に適量の摂取が必要となります。

 高齢者の場合、「暦年齢と生活年齢の間に大きな個人差がある」「日常の運動量やエネルギー摂取量に個人差がある」「食習慣や食物嗜好に個人差が大きい」「身体各臓器の能力に余裕がなかったり、慢性の疾患を抱えていることが多い」などを配慮し、たんぱく質の摂取量は1日、体重1kgあたり1.0〜1.5gの範囲を目安として柔軟に対応しましょう。また、たんぱく質を多く摂りすぎた場合、成長期や活動量の多い人は消化・吸収・代謝によってどんどん処理されますが、胃腸の弱い人や消化能力の衰えぎみな高齢者には負担になることもあります。たんぱく質は消化のよいものを適量摂ることが望ましく、食べる「量」と共に「質」が大切になります。

 

褥瘡を治す 

 褥瘡は長期間の圧迫や寝床での擦れなどによって血行が悪くなり皮膚に炎症や壊死が起こるもので、患部の除圧を基本とした適切な治療が必要です。さらに、新しい組織をつくるために良質なたんぱく質をしっかり摂ることが大切です。また、たんぱく質の合成には亜鉛も必要とされます。亜鉛含有量の多い食品(魚介類、肉類、玄米、納豆、抹茶、緑茶の一番茶など)も摂取しましょう。

 アミノ酸スコアが100であっても、それぞれの食物にはたんぱく質だけではない様々な栄養素も含まれています。毎日の食事が一つの食品に偏ることのないように、いろいろと組み合わせてバランスの良い食事を心がけましょう。

体をつくるたんぱく質は20種類

 

1日の献立に入れたい、5種類のたんぱく源

卵は1日1個 良質のたんぱく源でありながら、ビタミンC以外の栄養素をすべて含みます。卵黄に含まれるレシチンは血中コレステロールを溶かし、血管を掃除する働きがあります。加熱しすぎると消化が悪く、飲み込む機能の低下した人にはボソボソと食べづらいものになってしまいますが、半熟程度は食べやすく、消化・吸収も抜群です。

 

牛乳は1日2杯 良質のたんぱく源であり、消化・吸収のよいカルシウムも多く含みます。牛乳を飲むと下痢をする乳糖不耐症(牛乳の糖分を消化できない)の人は、温めると少しずつ飲めるようになります。ヨーグルトやチーズなど発酵された食品は下痢の心配がなく、牛乳よりも消化・吸収がよく、乳酸菌により腸の健康を保つ働きもあります。

 

肉は1日1皿 肉の主な栄養素はたんぱく質と脂質です。魚や野菜に比べてカロリーが高いので、脂肪が気になる場合は、赤身やヒレ、鶏肉を選ぶとよいでしょう。豚肉にはビタミンB1、B2、牛肉には鉄、鶏肉にはビタミンAも豊富に含まれます。肉が噛みづらい場合は、筋切りをしたり、繊維をたたいてつぶすなど下ごしらえをしっかりしましょう。

 

魚は1日1皿 魚に含まれる主な栄養素はたんぱく質と脂質、ビタミンB1、B2などです。血行をよくするEPAや脳を活性化するDHAなど肉にはない健康物質も含みます。小ぶりな魚の骨はカルシウム源になり、頭やカマにも栄養がたっぷり含まれています。

 

大豆製品は1日1杯 植物性食品でありながら、「畑の肉」と呼ばれるほど良質のたんぱく質を多く含みます。豆腐は大豆の栄養を受け継いだ上、大豆よりも消化・吸収がよく、豆腐を作る際に出るおからは食物繊維やカルシウムも多く含み、一緒に食べると大豆の栄養を余すところなく摂れます。

 

*腎臓病でたんぱく質の摂取に制限がある場合でも、極端に摂取量を減らしてしまうと必須アミノ酸を十分に摂ることができず体の組織をつくることができなくなってしまいます。
検査値に基づき医師や栄養士に指示された量を守り腎機能に見合ったたんぱく質を摂取するように心がけましょう。

 

工藤秀機 医学博士

 

工藤秀機 医学博士
東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学第一内科講師、都立墨東病院輸血科部長を経て、2001年より女子栄養大学教授、同栄養クリニック部長。
臨床栄養学、内科学、血液・輸血学を専門分野・研究課題とする。



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