介護の基礎知識 <20>

介護情報誌ハナさんVol.20 2004年06月掲載 特集20

調理の工夫

 年をとるに従って、噛む機能が低下し硬いものが食べづらくなったり、舌、頬、喉などの筋力が低下して食物が口に残ったり、むせやすくなることがあります。また、脳血管障害や神経系の病気で起こる麻痺などで舌が動きにくくなったり、痴呆症のため認知に問題が生じるなど、食べることの問題は人により異なりその程度も様々です。こうした問題は適切な治療や口腔ケア、リハビリを行うことで解決することもありますが、調理に工夫を凝らすことで家族と同じメニューを食べられる場合もあります。 

 日本介護食品協議会では、「噛む力」や「飲み込む力」が弱まった人たちにもおいしい食事を安心して食べてもらえるように、市販の介護食品を広い意味でとらえ「ユニバーサルデザインフード」としました。選ぶ人にわかりやすいように、噛む力や飲み込む力の目安を 4 段階に区分し、とろみ調整を加え 5 つに分けて表示しています。

 今回は増田邦子先生(管理栄養士)に、同じメニューを「ユニバーサルデザインフード」の区分に合わせて展開しながら、おいしく、食べやすい調理の工夫をわかりやすく教えていただきます。

 

食べる機能に合わせた食形態

区分1容易にかめる主食

区分1容易にかめる主菜

区分2歯ぐきでつぶせる主食

区分2歯ぐきでつぶせる主菜

区分3舌でつぶせる主食

区分3舌でつぶせる主菜

区分4かまなくてよい主食

区分4かまなくてよい主菜

 

噛む力をカバーする工夫

 お年寄りの場合、「噛めない」という理由で肉が嫌いという人が多いようです。調理の仕方によっては肉の繊維が硬くなって、噛みづらくなってしまうことがあるのです。 トンカツなどは肉の繊維を切った薄切り肉を好みの厚さに重ねることで、軟らかく仕上げることができます。肉を重ねてから小麦粉、卵をたっぷりつけ、生パン粉(または、パン粉に霧吹きで水分を加えたもの)をまぶし、 170 ℃くらいの油でからりと揚げます。

噛む力をカバーする工夫 とんかつ

 野菜や果物も繊維を切るようにカットしたり、煮含めるなど水分を補いながら軟らかくすることで、噛みやすく、飲み込みやすくなります。

 

噛む力をカバーする工夫 すいか

 

とろみをつけて飲み込みやすく

 食物をよく噛むと唾液と混ざって軟らかい食塊になり、喉を通りやすくなります。しかし、唾液の分泌が少なかったり、歯や舌など口腔機能がうまく使えない場合は、とろみをつけることやゼリー状にすることで、まとまりやすく飲み込みやすくなります。

とろみをつけて飲み込みやすくハンバーグ ハンバーグの寒天寄せ
<和風あんかけハンバーグ>          <和風ハンバーグの寒天寄せ>

 パラパラのチャーハンなどは飲み込む機能の弱った人には食べにくいものです。そのような場合には、しっとりとした「あんかけチャーハン」がおすすめです。また、麺類は短めに切ってあんをかけることで、麺と汁がからまって食べやすくなります。

かきたまあんかけかにチャーハン
<かきたまあんかけかにチャーハン>

   うどんを短く切る 
和風あんかけうどん よもぎそばのとろろあんかけ
<和風あんかけうどん>                 <よもぎそばのとろろあんかけ>

 

食事介助の工夫

 縁に反りがついている皿は片手でもすくいやすく、斜めになったスプーン・フォーク置きは持ち上げやすくなっています。握力の弱い人にはスポンジタイプの軽い握り手もあり、先を曲げることのできるスプーンもあります。スプーンは幅が 3cm 以下のものだと口をすぼめやすく、食物を取り込みやすくなります。また、食器を固定するすべり止めマットも便利です。用途に合わせて使いやすいものを選びましょう。また、食べるときの姿勢や椅子、テーブルの高さなども大切です。

食事介助の工夫食器

 食事介助のときの一口量は多すぎても少なすぎても食べづらく、 1 回で飲み込める量を口に入れるようにします。スプーンで唇や口の前のほうで取り込めるようにすると味もよくわかり、食べやすくなります。
口の開きづらい人には、先の細くなったものやシリコンでできた口当たりのよいスプーンなどもあります。

口当たりのよいスプーン

 安売りショップなどにあるプラスチックのボトルやノズル、市販のゼリー飲料を組み合わせたアイデアグッズは、舌で食物の送り込みがうまくできない場合、ノズルの先を舌のくぼみに当てると、ゼリー飲料などが飲み込みやすくなります。
片麻痺がある場合、クッションなどで姿勢を整え、麻痺のない側からスプーンを入れると食べやすくなります。

 ノズル付ボトル ゼリー飲料 垂らして状態をチェック

 

増田邦子 管理栄養士

 

増田邦子 管理栄養士
福岡県出身。中村学園大学家政学部卒業。
病院栄養士を経て現在、「特別養護老人ホームしゃんぐりら」に勤務。
後期高齢者の食介護支援のため「口から食べることの大切さ」を研究課題とする。



Copyright by PureCommunications,Inc. 1999〜2008