介護の基礎知識 <22-1>

介護情報誌ハナさんVol.22 2004年12月掲載 特集22

誤嚥を早期に発見しよう

 年をとると体に様々な変化が生じ、「噛む、飲み込む」という食べる機能にも影響を及ぼします。食べる機能が弱くなると食べる量も減り、体重が減少したり、免疫力も低下するなど基礎体力も衰えます。なかでも怖いのは「誤嚥性肺炎」です。これは、食べ物や飲み物など食道に入るべきものが気管や肺に入ってしまい細菌が繁殖して起こる肺炎です。普段は誤嚥をしてもむせることで気道へ入るのを防ぐことができますが、飲み込む力が弱くなるとむせることなく気道に入ってしまったり、そのままのどに詰まらせて窒息してしまうこともあるのです。

 誤嚥性肺炎は一度起こすと繰り返しやすく、手遅れになれば命を落すことさえあります。予防するには、誤嚥を防ぐこと、口の中をきれいにすること(口腔ケア)、胃から食道への逆流を防ぐこと(食後すぐに横にならず、 2 〜 3 時間は腹部を圧迫しない程度の座った姿勢でくつろぐ)、普段から栄養をしっかり摂り基礎体力をつけることなどが大切です。

 すべての人が誤嚥をするわけではありませんが、誰にでも可能性はあります。お年寄りの場合、普通に食事をしている人が誤嚥をしても気付かず、肺炎になってから病院へ運ばれるケースもあります。今回は、藤谷順子先生(国立国際医療センター リハビリテーション科医長)に誤嚥をしている可能性があるかどうかの見分け方と、食べやすい食事についての考え方を伺いました。

 

危険サインを見逃すな

 元気に見えるお年寄りでも、いつもの食事を食べづらく感じていたり、気付かないうちに誤嚥をしている可能性もあります。誤嚥を防ぐには、家族や周りの人が「毎日の生活の様子に見え隠れする危険サイン」に早めに気付いてあげることです。今まで気にもしていなかったことが「危険サイン」であるかもしれません。

 

食べる様子をチェックしよう!

よくむせたり、 咳込みますか?
むせたり、 咳込みますか
飲み物を
あごを上げて飲み込みますか?
あごを上げて飲み込みますか
食べ物をよくこぼしますか?
唇の端からよだれが出ていますか?
食べ物をいつまでも口に溜めていますか?
食べ物をよくこぼしますか
食後にガラガラ声になりますか?
痰が増えましたか?
食後にガラガラ声になりますか
食事に時間がかかるようになりましたか?
食事の量が減りましたか?
食事に時間がかかるようになりましたか
このような症状が見られる場合、食べる機能がうまく働いていないのかもしれません。
食前に筋肉の緊張を柔らげる嚥下体操をしたり、飲み込みやすい食事に替えて様子を見ましょう。

 

全身状態をチェックしよう!

水分補給1 .排尿回数は 1 日何回ですか?

トイレに行控えくのが面倒で水分をている人も多いようですが、液体が飲み込みづらいため飲む量が減少していることも考えられます。液体はとろみをつけたりゼリー状にすることで飲み込みやすくなります。脱水症の予防のためにも水分はたっぷり摂りましょう。

 

 

 

低栄養2 .体重をはかっていますか?

食べづらいために食事の量が減少したり、偏食で栄養状態が悪化すると体重が減ります。栄養が不足すると基礎体力が低下し、様々な症状を悪化させる要因になります。体重を維持できるようにしっかり栄養を摂りましょう。

 

 

 

 

食物繊維3 .便秘ぎみですか?

液体が飲み込みづらかったり、食事が食べづらいため、水分や食物繊維が不足している可能性があります。繊維質の多い食品も切り方や長時間熱を加えることで食べやすくなるものも多くあります。調理法を工夫して栄養バランスにも気を配りましょう。

 

 

唾液の分泌4 .歯は揃っていますか?
入れ歯は合っていますか?

噛み合わせが悪いと食べられるものも食べられません。早めに治療し、しっかり噛むことのできる状態に戻しましょう。歯がなければ、入れ歯をきちんと使いましょう。食事をするときに食べづらいからと入れ歯を外す人もいるようですが、きちんと使える入れ歯に調整してもらえば食べづらさも解消できるはずです。食物はよく噛むことで唾液と混じり、飲み込みやすくなります。

 

口腔内細菌5 .歯みがきをきちんとしていますか?

口の中が汚れていると細菌が増殖しやすく、唾液を誤嚥することで肺炎になる可能性が高くなります。歯や歯ぐきを痛めたり、食事をおいしく感じないなど食欲低下にもつながります。口の中は清潔に保ちましょう。

 

 

 

嚥下体操6 .鏡に口の中が映るほど口を大きく開けたり、
舌で唇をぐるりとなめたり、ブクブクうがいができますか?

口や舌が思うように動かせなくなった人は、口の筋肉や舌の力が弱くなっている可能性があります。医師の診断を受け、効果的な体操やマッサージ法など専門的な指導を受けるとよいでしょう。

 

 

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藤谷順子 医学博士

 

藤谷順子 医学博士
筑波大学医学専門学群卒業。東京都医科歯科大学付属病院、東京大学医学部付属病院リハビリテーション部などを経て現職。 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会評議員。共著として「嚥下障害食のつくりかた」「嚥下リハビリテーションと口腔ケア」。監修として「かみにくい・飲み込みにくい人の食事」など。



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