床ずれを治療して退院したはずの人が在宅療養中に再発させてしまったり、また反対に、家庭での療養生活では何でもなかった人が、施設に入所したり病院に入院したことで床ずれができたという話をよく聞きます。これは、在宅、施設、病院と環境が変わることで食欲がなくなり栄養不足になってしまったり、人手不足で寝たきりになっていたり、体を清潔に保てていないことなどが原因です。
また、寝たきりやそれに近い状態の人には潜在的にリスクがあることも忘れてはなりません。つまり、活動量が少なく、栄養状態も良好でない場合が多く、常に床ずれが発生しやすい状況にあるということです。複数の病気を持っている人も少なくないので、食べられなくなればすぐに栄養状態が悪化して入院するケースも起こり得るのです。
しかし、現在の食事内容を見直したり、介護の質を向上させることで床ずれは予防できます。介護の質がよくなるということは、少しの力でよりよい効果が得られるということです。大きく化膿してしまった床ずれを治療するよりも予防したほうが、本人にとっても介護者にとっても負担ははるかに少なくてすむはずです。今回は高岡駅南クリニック院長の塚田邦夫先生に、床ずれ予防の方法について4つの視点からお話を伺いました。

「床ずれ」とは、骨の出ている所に一定以上の圧力(体重)が持続的に加わることで血管が圧迫され、血が通わなくなり組織が死んでしまった状態のことです。医療の専門用語では「 褥瘡 (=褥創)」といいます。
特に仙骨部(図2)に発生しやすいのは、 廃用症候群(使わない機能や能力が衰えてしまう症状)によって筋肉が薄くなり、結果として骨が飛び出てしまうことと、長い間寝ていることで体圧がかかりやすいからです。また、便や尿の失禁があり、清潔にされていないことも原因の一つです。おむつを使用している場合は排泄物を速やかに処理し、皮膚を清潔に保つためにも入浴はできる限り行いましょう。さらにギャッジベッドの角度をつけすぎたり、車椅子に座るときの姿勢が悪いと皮膚を痛めてしまうこともあります。介護用品は体に合ったものを選び、負担の少ない姿勢が保てるようにし、状態に応じてその都度調整することが大切です。除圧をするための体圧分散用具(マットレスやクッション)を利用するのもよいでしょう。
療養中は床に伏せがちですが、寝室に閉じこもり寝たきりでいることは、廃用症候群の原因にもなります。食事のときは食卓へ移動する、調子のよいときは車椅子で散歩に連れて行ってもらうなどの気分転換も必要です。また、デイケアなどの通所サービスも大いに利用しましょう。少しずつでも体を起こし、動かすことができれば、長時間一定の場所に体重がかかることを避けられます。そうした生活が床ずれを作らないための予防策となるのです。
栄養や水分を摂ることは生きていくために必要不可欠な手段であり、床ずれの予防にも欠かせないことです。床ずれで傷ついた皮膚や皮下組織も栄養と水分が満たされることで、自然の治癒 力を発揮しやすくなります。
実際に「介護レポート22」にある「栄養調査票」で日頃の食生活をチェックしてください。点数が高ければ栄養や水分が不足している可能性が高く、床ずれの発生率も高くなります。早急に医師の診断が必要な場合もあります。また、食事内容に不安を感じるようであれば、栄養士のいる病院や保健センターなどで栄養食事指導を受けてみましょう。朝、昼、夕、間食と1日の食事内容を数日分メモして、実際に摂取した栄養成分を計算してもらえば、今の食事をどう工夫したらバランスのよい食事になるかなど適切なアドバイスが受けられます。
自分の歯があっても、なくても、口の中は清潔に保ちましょう。高齢者が肺炎と診断される場合「誤嚥性肺炎」(食道へ入るべき食べ物や飲み物、 唾液が口の中の細菌と一緒に気管や肺に入ってしまい細菌が繁殖して起こる病気)である確率が非常に高いのです。よく 噛んで栄養をしっかり摂り抵抗力をつけるためにも、口の中の細菌を増やさないためにも、口腔ケアは大切です。
定期的に歯科検診を受け、入れ歯を快適な状態で使えるように調整してもらうことも必要ですし、歯科衛生士から口腔ケアの直接指導を受けるのもよいでしょう。また、むせやすくなったり、飲み込みにくく感じる場合は、食べ物の形態にも気を配りましょう。安心してしっかり食べられる口を保ち、口の中を清潔に保つことが床ずれの予防につながるのです。
傷口の感染が広がれば床ずれは悪化します。感染をくい止めるためには、傷口もその周りの皮膚もいつも以上に清潔にする必要があります。そのために一番効果的なのが入浴です。たっぷりのお湯につかることで、傷の中の汚れは浮き出て洗い流されます。傷の周りはテープをはがしたあとなどが残らないように、石けんを使ってやさしく洗いましょう。
ただし、ゴシゴシこすったり、マッサージはしないでください。皮下組織が引っ張られて床ずれが悪化してしまいます。また、全身状態が入浴に適さないとき、傷口がすべてかさぶたで覆われているときは入浴を控えましょう。
床ずれを予防するためには「介護力」が必要です。しかし残念ながら、よかれと行っていることが実は思い込みで、労力がかかるだけで何の効果も得ていない現実があることも事実です。
適切で質のよい介護をすることは、結果として介護負担を大きくせずに済むのです。社会的資源を大いに活用し、専門家から正しい指導を受けて介護のレベルを向上させましょう。
