たけうち先生の介護講座 事例研究<03>

サービス開始後、ADLが低下し介護量も増加

 菊次郎さん(仮名/84歳 男性)は、妻(82歳)と二人暮らし。75歳のときに軽度の脳卒中にかかったが、ADL(日常生活動作)は自立していた。82歳頃、トイレが間に合わないことが多くなり、おむつをやむおえず使い始めた。高齢に加え、妻はおむつの世話で腰痛を覚えることもあり、半年後にケアマネジャーへ援助を申し出た。

 

ケアマネジャーのアセスメント

軽度の糖尿病と高血圧症があるが、近所の開業医で定期的に診察を受けており、病状は安定している。
軽い右片があるが、箸での食事は可能。拘縮もない。
3ヵ月ほど寝たきりであったため、歩行が不安定で、食事以外は妻が介助。
おむつを使用。妻は小柄で体力もなく、介護には無理がある。

ケアプラン

ケアマネージャーの訪問による月1〜2回の健康チェック。
介護負担軽減を目的に週2回のホームヘルパー派遣。内容はおむつ交換、清拭、入浴介助、家事援助。
 (介護保険制度施行前で、この時点では週2回の派遣が限度。)

その後の状況

 菊次郎さんは軽い風邪にかかったり、夏には元気をなくす(大半は脱水症を起こしています。元気のある人も、ない人も、日頃から水分補給を心がけましょう。)など、次第に介護量が増えていった。ホームヘルパーの派遣も増え、やがて週4日になり、さらに週5日となった。 
 妻はホームヘルパーの派遣で助かってはいるものの、最近では菊次郎さんの夜間排尿回数が増えて起こされることが多くなり、体力的に続かないという。 >

 

リハビリや通所型サービスで「自立」を目指す

 トイレが間に合わない以外は自立していた菊次郎さん。介護負担を軽減する目的で立てられたはずのケアプランでしたが、結果的に介護負担は年々増加し、週に5回もホームヘルパーの派遣を受けることになってしまいました。菊次郎さんの状態は悪化し、妻の介護負担も増えています。
 ケアプランは、利用者と家族(介護者)の抱える問題を解決することを目的に立てるものです。このケースは、菊次郎さんを寝たきりにさせてしまい、家族に「ホームヘルパーが来てくれる=助かっている」という勘違いをさせてしまったうえ、ケアプランを立てた本人も、介護負担は軽減していると思い込んでいる悪い例です。

1.日中はできるだけ離床させ、訪問看護などでリハビリ訓練を入れる。
2.デイケア、デイサービスなどの通所型サービスを入れる。

  など、妻の手伝いではなく、自立支援型のサービスを中心にするべきでした。
 通所サービスを利用することで、要介護者は離床時間が長くなり、体力も戻ってきます。長い間家の中にこもっていると、外に出ることに不安を感じることがあるかもしれません。しかし実際は、仲間とともに過ごすことで意欲がわいてきます
 また通所型サービスやショートステイなどには、介護者に休息を与える効果もあります。訪問サービスだけでは、妻は365日介護に拘束された状態です。ケアプランは、要介護者はもちろん介護者のQOL(生活の質)の向上も考え、ストレスをためこまないよう、自由時間の獲得にも配慮すべきでしょう。

 

「とりあえず」ではなく「十分な」サービスを

 ケアプランを決めるとき、「とりあえずホームヘルパーに来てもらおう」という考え方をしてはいませんか。「とりあえず」では、菊次郎さんのような事態になりかねません。全ては最初が肝心です。「考えられるだけの十分なサービス」からスタートしましょう。サービスが始まって必要のないものが出てくれば、それは自立に向かったということです。そうなれば、不要なサービスを減らしていけばいいわけです。
 プラン作成者は、現状の問題をきちんとつかみ、それを解決するための最善のプランを立て、利用者や家族に説明すべきです。サービスを受ける側も、わからないことは質問し、自分たちにできることは何か、そして自立を支援してもらうために、どんなサービスを受け入れていくべきかをしっかりと考えていきましょう。

 

スマイル&スマイル
埼玉県所沢市のデイサービスセンターより 

 脳梗塞の後遺症で失語症の鈴さん(仮名)は、近所を散歩する以外は家に閉じこもりがちで、友だちとの交流もありませんでした。同居している娘さんより、「サービスを受けたいが、介護の手抜きをするような思いと失語症の母が集団にとけこむのは困難なのではという危惧がある」という相談がありました。見学の後、娘さん付き添いでのデイサービスがスタートしました。一ヵ月たった今では、娘さんは家で見送り、鈴さんはデイサービスの日が嬉しくて朝からそわそわし、とても楽しく参加しています。  



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