たけうち先生の介護講座 事例研究<04>

歩行が困難で家にこもりがち

 松輔さん(仮名/90歳 男性)は2年前、妻に先立たれてから一人暮らし。大工をしていた。変形性膝関節症、糖尿病、狭心症の既往歴あり。要介護度2
 膝関節症のため歩行困難。室内は這って移動。浴室、トイレなどに手すりがあり、自立。ゴミ出し、買い物は近所の友人、竹田さん(仮名)が援助。食事は近くの梅本商店(仮名)に本人が電話し、毎日おかずを配達してもらっている。緊急通報システムが設置され、竹田さんと安全センターにつながっている。
 民生委員の巡回相談が月に3〜4回。ホームヘルパーが週1回、家事援助サービスに入る。

 

ケアマネジャーのアセスメント

風呂場に段差があり危険。転倒防止の見守りのため、ホームヘルパーにきてほしいという要望がある。本人が通所サービスを利用したくないというので、ホームヘルパー派遣を増やし、週2回見守りながら入浴する。
調理ができないので、調理器具を整備。週1回、ホームヘルパーが調理の準備と指導をする。

 

寝たきりにならないよう、生活にリズムを

 近隣の竹田さんなどの援助により、自立した生活を送っているように見える松輔さんですが、このケアプランを続けていった場合、今後どのような状況が予測されるでしょうか?
 一人で家に閉じこもりがちになると、ゴロゴロすることが多くなり、布団で過ごす時間が長くなります。使わない機能や能力は次第に衰えていき、いつの間にか寝たきりになっていたということがよくあります。松輔さんの場合、寝たきりにならないための予防的なケアプランを組んでもらうべきです。それにはまず、朝起きる時間、夜寝る時間、三回の食事の時間が規則的に行われているかどうかが問題となります。もし、不規則になりがちならば、その対策を考えなくてはなりません。
 デイサービスやデイケアなどの通所サービスには多くの利点があります。まず、週2回、3回と通ううちに生活にリズムができ、規則正しい生活を送れるようになります。また、通っている時間内の食事と入浴の問題が解決されます。顔見知りや友人を作ることもできます。レクリエーションなどを通して新しい趣味を見つけたり、リハビリ訓練を受けることもできるでしょう。糖尿病、狭心症の状態によっては、デイケアで医療面の観察や対応をしてもらうこともできます。
 また自宅では、本人が求めるサービスではなく、「自立支援型」のホームヘルプサービスを受け、目的をもって行動できるようなきっかけを作りましょう。例えば、ホームヘルパーと一緒に買い物に行き、天気がよければそのまま散歩をしてくるのもいいでしょう。買ってきた食材をホームヘルパーの手をかりながら一緒に調理することもできます。最近では、80歳、90歳の人たちが元気に参加している「男の料理教室」が開かれている地域もあるようです。

  通所サービスが嫌だからといって訪問サービスだけを増やしても、寝たきり予防にはつながりません。自立性を維持するためには、家の中に閉じこもらないで、外に出る機会を増やすことです。人と交わることで意欲も涌いてきます。松輔さんのように、受けたことがないサービスに抵抗を感じるのは自然なことです。体験入所などがあれば活用するのもよいでしょう。
 ケアプランは、現状の維持・回復を目的に立てなければ意味がありません。ケアプラン作成者は、本人・家族の希望に振り回されるのではなく、何が本人にとって最もよいプランなのかを見極めなくてはなりません。大切なのは、サービスを受ける側と提供する側との信頼関係です。お互いによく話し合い、納得のいくサービスを受けましょう。 

 

朝、夕方、深夜の安否確認と バランスのとれた食生活を

 松輔さんのように一人暮らしの場合、安否の確認と食生活の管理はとても重要です。 
 まず、安否の確認ですが、朝はゴミだしのときに竹田さんが、夕方はおかずを届けてくれる梅本商店の人がいます。この二人が何かあれば連絡してくれるはずです。このような近隣の人とのつながりは大切です。また、深夜は緊急通報システムがあります。緊急時に本人が使えるか否かには不安がありますが、一応は朝、夕、深夜の安否確認がとれる体制が整っているといえるでしょう。
 次に食生活です。食事は、「本人が梅本商店に電話をして毎日おかずを配達してもらい、週1回ホームヘルパーが調理の準備と指導をする」となっています。これでよいのでしょうか。
 松輔さんの場合、糖尿病を悪化させないためにも、食事の管理が必要です。好きなものばかり食べていては、症状の悪化につながりかねません。糖尿病の食事療法を守りながら、必要なエネルギー量は摂取できているのか、栄養の偏りはないのかなど、考えなくてはならない問題です。
 調理指導に加えて、何をどれだけ食べたらよいかの指導が必要でしょう。さらに栄養バランスの優れた食事が用意できても、残してしまっては栄養をとったことにはなりません。噛むことに問題はないか、誤嚥はしていないか、口腔ケアはできているかなどもチェックしましょう。  

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