たけうち先生の介護講座 事例研究<07>

寝たきりの妻を介護する夫

  サクラさん(仮名/65歳、女性)は山村で夫の松一さん(仮名/69歳)と二人暮し。慢性関節リウマチで入退院を繰り返すうち、徐々に四肢関節の拘縮・変形機能障害が進む。家の段差解消や手すりの取り付けなど住宅改造を行い生活している。
 3年前の退院から、体を動かすと股関節痛や長期臥床によると思われる目まいがあり、寝たきり。2週間に1回開業医が往診。排泄はベッドの上で介助してもらい便器で行う。 
 松一さんも2〜3年前からリウマチの症状が出て、四肢の指の関節変形・拘縮があり細かい作業や力仕事ができず病弱。自分自身も体が不自由なうえに妻の介護があり、心身の負担になっている。また、男は台所に入るものではないという考えをもち料理が苦痛でたまらない様子。松一さんとしては食事作りの軽減と、安心して外出できる一人の時間の捻出を希望。
 サクラさんの社会的交流は近所の人の訪問程度で、
車に乗ると酔うため外に出たくないという思いがある。入院生活が長かったのでできるだけ家で過ごしたい、歩けるようになりたいと思っている。

*慢性関節リウマチ・・・関節が炎症を起こし次第に関節が動かしにくくなる。微熱や、脈拍増加などの全身症状が起こり、日常生活にも支障があらわれる。膠原病の中では最も患者が多い。 

 

食事日記食事作りの負担を軽くするには

 食生活の負担を軽くするには二通りの方法があります。一つは配食サービスという方法、もう一つは家事援助で食生活を立て直していくというやり方です。
 本人のみ対象という介護保険での配食サービスでは、このケースの場合、要介護者のサクラさんだけが満たされ、料理が苦手な松一さんは栄養失調になってしまうかもしれません。できれば本人のリハビリも兼ねた通所系のサービスを取り入れながら、家事援助で食事作りを応援してもらうとよいでしょう。 
 ほぼ寝たきり状態でも1日1,300kcalの栄養が必要です。特に寝たきりの場合、栄養が不十分なために褥瘡ができてしまうことも少なくありません。正しい除圧と栄養価の高い食事をしっかりとることで、褥瘡は防ぐことができます。市町村には栄養士がいますから、ケアマネジャーなどに相談して現状の食事を分析してもらいましょう。数日分の献立を記録してアドバイスをもらうとよいでしょう。 

 

リウマチ頚椎専門医に診てもらう

 リウマチの専門医なら、サクラさんが訴える目まいが長期臥床によるものではなく、リウマチによって頚椎の一番上が侵されている可能性が高いと考えます。従って、サクラさんの場合、頚椎を安定させるためのカラーを着けるだけで症状が緩和され、ベッドから離れることや外出することも可能になってきます。
 目まいというのは文字どおり回りが回転するような、あるいは体がぐらぐら動揺するような状態をいいます。長いこと寝ていた後で起こるのは起立性低血圧で、ふっと意識が遠のくようなこと(いわゆる立ちくらみ)をいい、何度も繰り返していくうちに慣れてしまいます。
 さまざまな病気にはそれぞれ専門医がいて、専門医に診てもらわないとわからないことも数多くあります。慢性関節リウマチの専門医は膠原病を診ている内科医、あるいは整形外科医です。専門医がいる病院にはリウマチ科もあります。 

 

リハビリ過疎地だからといって閉じこもらずに!

 一日中ベッドの上に居るよりも、リハビリを兼ねてデイケアやデイサービスに通うとよいでしょう。過疎地だから通えないということはありません。片道30〜40分かけて通っている人はたくさんいます。しかし、目まいがする人は車に酔いやすいものです。一度に目的地まで着かなくても、今日は10分、次は20分と少しずつ車に慣れさせたり、車種やルートなども、ケアマネジャーや医師などに相談して一緒に考えてもらいましょう。
 サクラさんのような場合、目まいや途中の血圧変動に気をつけながら、歩く練習やつかまり立ちで行えるようなゲームがあったらぜひ参加して欲しいものです。シャッフルボードや歩行器につかまって行う輪投げなどアクティブなメニューはよい立位練習になります。車椅子に座りっぱなしで風船バレーをやるのでは、リハビリとしては意味がありません。

 

自立できるサービスを選ぼう

 サクラさんは専門医に診てもらえば少なくとも目まいに関する問題は解消され、週に2回程度でもリハビリのためにデイケアやデイサービスに通えるようになれば、歩ける可能性もでてきます。
 松一さんもサクラさんが外出している間、自分の時間ができ、家事援助で食事作りの負担も減らせます。迷うことや疑問に思ったことはケアマネジャーなどに相談し、今よりよい状態になるために、自立できるようなプランを選んでいきましょう。



Copyright by PureCommunications,Inc. 1999〜2008