たけうち先生の介護講座 事例研究<15>

水分量を正しく計算しよう

 浩さん( 72 歳 / 男性 / 仮名)は 5 年前に発症した脳梗塞を再発し、 6 ヵ月の入院生活を経て退院。しかし、重度の嚥下障害のため口からの飲み込みが困難となり、胃ろう(栄養や水分などを補給するために胃にあけた穴)を造設。全介助。 
  ケアマネジャーは今後の健康管理のため、週 2 回の訪問看護と週 7 日の介護型ヘルパーを計画。浩さんはすべてを経管栄養でまかなうため流動食( 1,250ml )に加え、 1 日 3 回、合計 600ml の水分を胃ろうから追加している。
  退院後、奥さんと二人の住み慣れた自宅療養とあって浩さんの表情もよくなってきたが、ときどきぼんやりと活気のない日があり、 10 日に一度くらいは 37 度程度の微熱が出る。その都度、訪問看護師は胃ろう部分の感染を疑うものの特別な変化はみられない。

 

水分は足りているか

 浩さんのようにときどき微熱を出したりぼんやりするのは脱水が原因と考えられる場合が多く、看護師やケアマネジャーは水分補給の計算を間違えているようです。
 人は 1 日にどのくらいの水分を排泄するのでしょうか。水分の排泄方法はいくつかありますが、そのうち自覚できるのは汗と尿です。この他に息の中に含まれる水蒸気や、皮膚から蒸発していく水分など、自分でも気付かないうちに体外へと出て行ってしまうものもありますし(不感蒸泄)、糞便も忘れてはいけません。人の体温は中心部で 38 度くらいあり、皮膚や肺から汗や呼吸によって、熱を体外に出して平熱を保っています。また、尿には体が作り出す老廃物を排泄する働きがあります。「おむつを交換してもらうのが大変だから」「トイレに行くのがめんどうだから」と水を飲むことを我慢していると、老廃物を体内にため込んでしまい尿毒症などの危険な状態を自ら作り出してしまうことになります。さらに糞便にも軟らかく排泄しやすくするための水分が必要です。このすべてを合計すると、人の体は 1 日に 2,400 〜 2,800ml くらいの水分を排泄しているのです。そのため体の機能を健康に維持するためには同量の水分( 2,400 〜 2,800ml )を摂り入れなくてはなりません

 具体的な水分の摂取方法としては口から摂る「固型食物 ( 食物に含まれる水分 ) 」と「飲水」という、いわゆる普通の食事の他に、「燃焼水(体内でエネルギーを産生したときに生まれる水)」があります。このうち「燃焼水」を除くと、普通の食生活から摂取する最低必要水分量は 2,100ml 〜 2,500ml となります。
 しかし、浩さんの場合はすべてを経管栄養から摂取しているので、「固型食物」と「飲水」からの水分は 0 です。計算によると流動食の 1,250ml 、それに 1 日 3 回の水分補給として 600ml を加え 1,850ml となっていますが、水分の 1 日最低必要量の下限 2,100ml と比較しても 250ml 不足しており、体調不良はこのことによる脱水症状が原因だと思われます。一日に必要な水分量
 流動食によって含まれる栄養量と水分量の割合は異なるので、確保したい水分量をしっかり把握し、流動食に含まれる水分量と1日の水分補給の合計が 2,100 〜 2,500ml になるように計算する必要があります。下痢・嘔吐をしたときや発熱しているときなど、体調や環境の変化によってはより多くの水分を必要とします。このようなときは数字にとらわれずしっかり水分を補給しましょう。

 

注1)心臓病や腎臓病などの病気で水分制限のある人は、かかりつけ医の指示に従ってください。

 

お年寄りの微熱は?

 一般に微熱は 37 度以上のことをいいますが、これは若い世代の基準です。若い世代の平熱は 36 度 5 分くらいで、それが 5 分ほど上昇すると微熱といわれます。
 しかし、お年寄りは代謝の関係で平熱が低く、 35 度台という人がほとんどで、仮に平熱を 36 度としても 5 分上がった 36 度 5 分は微熱としてもよく、実際にこれくらいの熱でも脱水している例は少なくありません。まずはその人自身の平熱を知ることが大切です。



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