たけうち先生の介護講座 事例研究<16>

生活の見直しと水分補給で便秘を克服

 誠さん( 86 歳 / 男性 / 仮名)は妻と息子家族と同居している。 2 、3 年前に認知症と診断され、最近では興奮すると目つきが変わる、体に触れると嫌がる、話しかけても言葉が少ない、ウロウロするなどの症状が見られる。このようなときには「トイレに行きたい」ということが多い。また、夜間興奮してどなることもある。
  水分摂取量も少なく慢性の便秘で、現在は下剤を使用して排泄しているが、週 2 回通っていたデイサービスの迎えのバスの中で下剤が効いて便失禁をしてしまったことがきっかけとなり、それ以降理由をつけて行かなくなる。

 

サインを見逃さない

 誠さん自身が「トイレに行きたい」といっていたように、認知症の人がときどき興奮するのは「便秘」が原因であることが多いものです。そして「夜間に興奮してどなる」のは、「脱水」を原因としていることがほとんどなので、必ず水分のことを考える必要があります。このように、便秘や脱水など身体的に不調を感じるとき、認知症の症状が悪化したように見えることがよくあります。しかし、これは便秘や脱水状態が改善されればもとに戻る場合も多いので、認知症がひどくなったとなげく前に便秘や脱水症状の改善に努めることが大切です。
 排便に大切な便の「質」と「量」は、水分や食生活と密接な関係があります。健康な人の便はたっぷりと水分を含んでいますが、脱水状態になり水分が少なくなると便は硬く小さくなります。また、食物繊維は腸全体の活動(蠕動運動)を活発にし便の量を増やして排便しやすくしてくれますが、少なければ体積の小さい便となり直腸への刺激(排便を促す刺激)も減り、便の排泄をより困難にするのです。軟らかく排便しやすい便にするためにも毎日最低 1,300ml 〜 1,500ml の水分を飲み、食物繊維を多く含む食品も心がけて食べたいものです。とはいえ、噛む力や飲み込む力が弱くなっているお年寄りにとって、野菜や果物をたくさん食べるのは大変なことです。その点、寒天は水分と食物繊維を同時に摂れるとても手軽で便利な食材です。飲み込みの悪くなっている人には少しゆるめに作るとよいでしょう。
  便秘のケアには、下記 のような 8 原則を守ることが大切です。静岡県のある施設では下剤撲滅運動を行い、現在では入居者が下剤を使わないで生活しています。まずは規則正しい生活を行うこと。そして、 1 日の生活リズム、食事時間、排泄の時間(出ても出なくても時間になればトイレに行く)を規則的に行い、おむつ使用者は排便のリズムを調べてポータブルトイレを使いました。介護する側もされる側も自然な形で排泄したいという強い意志と 8 原則を守ることが下剤撲滅運動の成功につながったようです。
  デイサービスの利用者の中には「人前でトイレに行きたくない」「他人に下の世話を受けたくない」という思いから、前日や 2 日前から下剤で排便をコントロールしている人がいるようです。誠さんも下剤を使用していたようですが、それが裏目に出てしまい迎えのバスの中での便失禁につながってしまったとも考えられます。また、朝の準備が間に合わず家族がそのまま送り出して失禁が起こったとも考えられます。家族に余裕がなければ、「出かける前にトイレに行く」「身づくろいをする」などを介助してくれる通所準備のためのホームヘルパーに入ってもらうという解決策もあります。また、便秘がひどく下剤に頼る必要があるならば、訪問看護を頼み、排便リズムをもとに戻すような看護計画を立ててもらいましょう。こうすることで誠さんの興奮状態は落ち着き、再びデイサービスに通うこともできるでしょう。

便の色で健康チェック

 

 

● 2 〜 3 日に 1 回でも排便が習慣になっていれば便秘ではありません。また、便を観察することは健康状態を診ることでもあります。排便したときには流す前にどんな便が出ているか確認しましょう。

 

便秘のケア 8 原則

1.規則的な生活を送る
2.規則的な食事時間を守る
3.適度な運動をする
4.決まった時間の排便(排便リズム)を試みる
5.(おむつ使用者は)「座位排便」を試みる
6.十分な水分を摂る
7.繊維の多い食物(食事)を摂る
8.食物繊維飲料などによる補充(便秘傾向の人に)

(それでもだめなら)排便誘発の座薬、下剤、摘便などのケア



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