たけうち先生の介護講座 事例研究<19>

発熱の原因を知っておこう

 アズミさん(仮名/75歳/女性)は2年前よりしばしば微熱が出て、ときには吐き気を伴うこともある。最近では、夕方に熱が上がり「いるはずのない人が見える」などの幻覚も起こる
  いくつかの病院を受診するが発熱の原因は不明といわれ、活動性・意欲も低下し、認知症(老人性認知症)と診断された。現在はすべての行動に介助が必要になり、要介護5。78歳の夫と二人暮らし。

 

発熱の原因は脱水!日内変動・週内変動

  「発熱」「幻覚」などの症状が見られるときは、脱水症を疑ってみる必要があります。その他、「皮膚の乾燥」「傾眠(うつらうつらする状態)」など、とくに病気でもないのにこうした症状が見られる場合は、まず「水分をしっかり摂る!」ことが必要です。発熱に加えて嘔吐しているようであれば、普段よりも余分に水分を奪われていますから、いつも以上に多くの水分が必要になります。もし、水を飲む元気もないようであれば、すぐに医療機関で点滴をしてもらわなければなりません。
 夕方になると起こる幻覚は、日中から失われ続けてきた体内の水分が黄昏時に、「水分が不足してきました!」というサインとして現れているのです。認知症の人が、夕方から夜間にかけて落ち着きがなくなることがあるのもこうした脱水症が原因です。このように
1日の中で体調に変化が見られるようであれば、「水分不足」=「脱水症」を疑いましょう。また、認知症の人が便秘ぎみの場合、排便のある日に落ち着きがなくなるなどの症状が見られることがあります。このように1週間の中で体調に変化が見られるようであれば「便秘」を疑いましょう。 夫はアズミさんに付きっきりで、食事介助、オムツ交換、清拭など手厚い介護を行い、日に5回も熱を測っていましたが、水分や栄養に関する知識は持っていませんでした。ケアマネジャーが「水分を1日にどれくらい飲んでいますか?」と質問すると、夫は「?」という顔をしました。「水分はお薬以上に、体にとってよい効果のある大切なものなんですよ。たっぷり飲む習慣をつけましょうね。」と夫婦に伝えると、アズミさんの枕元に1,500ml入るポットを用意しました。以来、三度の食事の時間はもちろん、熱を測ったり、オムツを交換した後などちょっとした介護をする度に、夫はアズミさんにお茶を入れ、1日でポットに入っている水分をすべて飲みきるように心がけました。
 当初、アズミさんはオムツ交換の回数が増えると夫が大変だからと、水分を控えようとしました。しかし、「
尿量が少ない」のも脱水症の症状です。「尿は体の中で必要のなくなった老廃物を体の外に流してくれる大切な役割があるし、たくさん出た方が気持ちいいでしょ。」とケアマネジャーにいわれたことで、アズミさんは「自分でトイレに行きたい」という気持ちが強くなったようです。ケアマネジャーはすぐに、機能訓練のできるデイケアを探し、リハビリが開始できるケアプランに変更しました。

 

もう一つの原因も見落とすな!

 アズミさんの発熱の原因はもう一つありました。それは、寝たきりの時間が多く、歯みがきなど口の中のお手入れが十分にされていなかったことです。その上、水分が不足していたため自浄作用のある唾液の分泌も少なくなり、口の中は悪い細菌が活動しやすい環境になっていました。さらに横になる時間が多かったため、嚥下(飲みこむこと)反射が鈍くなり、細菌を含んだ唾液が無意識のうちに肺に流れ炎症を起こしていたのです。いわゆる、誤嚥性肺炎です。肺炎はお年寄りの死因のトップです。お年寄りの肺炎は、口の中の細菌が原因で発症する場合が多いので、

1.口腔ケアを徹底する1日の水分量
2.水分を十分に摂る
3.座位を保つ(寝たきりにしない)
をしっかり行い予防しましょう。  

*心臓病、腎臓病の人は水分が負担になることがあります。水分制限のある場合は、医師の指示に従ってください。



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