たけうち先生の介護講座 事例研究<20>

水分摂取量と活動量アップで尿失禁が改善

介護講座 紅葉さん(87歳/女性/仮名)は要介護4。認知症と診断され、普段は人形相手に子守りをし、外出すると迷子になってしまう。
 高血圧症と糖尿病を患っているが、症状は安定している。処方されている薬の中には利尿剤も含まれ、毎日飲んではいるが足のむくみは改善されない。同居している長男は統合失調症のため介護力はなく、姪が月に数回訪問し生活管理を行っている。
 連日、小規模多機能施設でサービスを受け、朝と夕方は訪問介護、日中は通所介護を利用。毎朝自宅に訪問すると、おむつがたれ下がるほどぐっしょり大量失禁している。日中はリハビリパンツを使っているが、トイレに連れていくと常に大量失禁が見られる。

排泄の準備行動と抑制

水分不足を解消しよう。

 なぜ、失禁は起こるのでしょう?正常な場合、膀胱に尿がたまると脊髄を通って脳の前頭葉にある排泄中枢に信号が届き、前頭葉は「ちょっと待って!」と膀胱に我慢(抑制)という指令を出します。そしてトイレに行き準備ができると再び「尿を出していいよ!」とゴーサインを出します(図1)。しかし、この抑制力が働かず我慢できないと、自分の意思とは関係なく尿はもれてしまいます。
紅葉さんはケアマネジャーから、1日1,300mlの水分を摂るよう指示され、施設の職員がきちんと飲めるように管理していました。ところが、糖尿病治療のため利尿剤を服用していたので、1日1,300mlの水分を摂っても十分ではなかったのです。
そこで、水分摂取量を1日2,000mlに上げることにしました。排尿がたっぷりあるせいか紅葉さんは拒否することなく出された飲み物を飲んでくれます。ぼんやりすることも少なくなり、5日目には、日中トイレに誘導しても失禁が見られないこともありました。覚醒レベルが上がったことで、尿を膀胱にためるという抑制力を取り戻したようです。

 

筋肉ポンプを使おう。座位と精神活動

 足がむくむのは生理的な現象で、利尿剤を飲んだからといって治るものではありません。また、足を上げて寝ても下げれば元に戻ってしまうので、これも意味のないことです。むくみを改善するためには、筋肉を働かせることです。
筋肉がやせてくると血液を循環させる働きが弱まり、心臓よりも下に水分がたまりやすくなってしまいます。本来、ふくらはぎには大きな筋肉があり、歩くことで筋肉が活発に働き、血液を心臓に送り返すポンプの役割をしています(図2)。足を動かさないで長い時間座っていたり、寝たきりでいると、この筋肉がポンプの役割を果たせず、水分が下へ下へとたまり足がむくんでしまうのです。
紅葉さんは、毎日午前9時30分に迎えが来て、午後5時まで通所サービスを利用していますが、日中テレビを観ていることが多くほとんど座ったままでした。そこで、家事を手伝ってもらい、皆と一緒に散歩に行くようになると、足のむくみは改善してきました。その上、夜間の尿失禁の量は減り、1週間後には尿失禁がみられなくなりました。
これまでは横になることで、日中足にたまっていた水分が体の中を移動し(図3)、夜の大量失禁になって排尿されていたのです。昼間の活動量をアップしたことで筋肉が働き、体内の水分を循環させることができるようになったことで、むくみがなくなり、尿失禁も改善されました。必要な水分量をしっかり摂って適度な活動をすることで、改善できる症状は意外に多いものです。

水分が移動するイメージ



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