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  介護レポート

 

Report07 「やさしさ」をかたちに、
        目配り・気配り・心配りで心地よさを追求 

取材協力★高齢者総合福祉施設潤生園  神奈川県小田原市穴部377 

 

  電車の車掌をしていた宇佐美馨さん(70歳)は、50代の働き盛りに脳卒中で倒れました。左片麻痺が残り、車椅子での生活が始まりました。退院後は、保健センターで機能回復訓練を受け、定年まで、使える機能を最大限に生かして地域の作業場で活動していました。

 馨さんは、奥さん、息子夫婦、孫二人の6人家族です。身の回りの世話は主に奥さんがしていましたが、2年前、体調を崩してしまいました。それを機に、馨さんは、奥さんへの気遣いからデイサービスを利用するなど、積極的に外に出る機会を増やしました。家族だけで馨さんの介護をすることは可能です。けれども、「家族それぞれが自分の時間をもつことが大切。外に出ることは、自分自身のリフレッシュと同時に、家族のリフレッシュにもなっている」と馨さんはいいます。

 現在、潤生園のデイサービスを週2回、2泊3日のショートステイを月2回利用しています。馨さんの一番の楽しみは、四季折々のドライブです。城址公園やフラワーセンターなどに季節の花を見学に行きます。梅、桜、藤、菊と、花を愛でながら仲間との会話が弾みます。英気を養うかっこうの時間になっているそうです。

 子どもたちが「行ってきます」と元気よく学校へ行くのは、そこに友達がいて楽しいからだと馨さんは思います。馨さんにとっての潤生園は、まさにその楽しい学校なのです。体操し、歌い、ときには習字もします。なによりも、様々な経験を重ねてきた仲間たちと語り合い、学び合う楽しみがあります。そして、信頼できる介護スタッフに見守られているという安心感があるのでしょう。

 潤生園は、特別養護老人ホームをはじめ在宅介護支援センター、訪問看護ステーション、ホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイ、訪問入浴、配食サービスなどからなる高齢者総合福祉施設です。

 デイサービスは、朝8時から10台の自動車を使って、介護スタッフが利用者の自宅へ向かうことから始まります。2回ほど往復し、1日およそ60人の利用者が集まります。ほぼ寝たきりの人でも、スタッフが寝室まで送迎してくれます。活動スペースは、レクレーションを楽しめる部屋、ゆっくりくつろげる部屋、ベッドが10台ある部屋の3つに分かれていて、その中を自由に行き来できるようになっています。疲れればベッドで横になることもできます。このように身体の状態に応じた、きめ細かいサービスを行っています。

  午前中は、主に入浴の時間です。その合間に、水分補給を兼ねたおやつが出ます。プリン、コーヒーゼリー、フルーツゼリーなどを日替わりで用意し、飲み物は、温かいお茶か冷たいお茶を選べるようにしています。

冷たいお茶はグラスで運ばれ、目の前で握りやすいプラスチックのカップに移してもらいます。
馨さんは左手が不自由なので、お盆の上には滑り止めのネットが敷かれています。

 

 

 

 昼食は、食欲をそそるよう、見た目も工夫しています。いくら栄養計算がされていても残してしまっては必要なカロリーがとれません。潤生園では、あらかじめ好き嫌いのデータも管理し、肉が苦手な場合はその人だけ魚にかえるなどして対応しています。また、食べる機能のレベルに応じて、介護食やミキサー食、ゼリー食などさまざまな形態の食事を用意しています。さらに、病態に応じて塩分やカロリー、たんぱく質などの調整も行っています。

 

 

この日の昼食のメニューは、鶏そぼろの5色丼、キャベツとカニフブキの辛子和え、煮物、大根の味噌汁、フルーツ。

 

 午後のおやつの時間は、お茶と菓子が出されます。日本茶や紅茶の他に、この時間は、「たまには喫茶店に行きたい」という利用者の要望に応え、特別にドリップコーヒーをたてています。希望者にのみ1杯100円で提供し、好評を得ています。また、「焼きたての美味しいパンが食べたい」という声を受けて、週に3回パンを販売するようになりました。誰でも気軽に買える値段です。自分で買物ができる喜びから、何年も立つことができなかった車椅子の利用者が自分の足で立ったという、嬉しい出来事もありました。

 午後は職員によるクイズ、書籍の朗読、体操などのレクリエーションやボランティアによる音楽療法、三味線コンサート、コーラスやバイオリン演奏、腹話術などが行われます。一緒に歌ったり、演奏したり、楽しい時間を過ごします。美容師によるカットボランティアは有償ですが、床屋や美容院に行けない利用者に大変喜ばれています。

 

 

週3回ある音楽療法の時間。先生のピアノ演奏に合わせて歌います 。

 

ゲームをしたり、会話を楽しんだりと
思い思いに過ごすひととき。

 潤生園には、機能回復のための訓練器具なども設置されています。しかし、デイサービス課長の秋山さんは、真心を込めて接する「気持ち」のリハビリがなにより大切だと考え、居心地のよい空間作りを心がけているそうです。医師の治療では限界のある病気が、気持ちのこもった介護の力で回復することもあります。痴呆のお年寄りも例外ではありません。心の機能回復が身体機能の回復につながることを日々実感しています。利用者一人ひとりの気持ちを汲みとりながら、これからも「介護の力」を発揮していきたいと願っています。

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