
福寿湯を経営する福田さんは、平成10年に札幌市のユニークサービス事業に参加しました。これは、市内8ヵ所の風呂屋で、月2回、自立者を対象にミニデイサービスを行うもので、現在も続けられています。これをきっかけに、福田さんはヘルパーの資格をとり、東区社会福祉協議会の協力を得て、毎週月曜日の営業時間の前に、デイサービス待機者を対象に、入浴サービスを始めました。そして平成12年、介護保険法のスタートと同時に、月曜日の入浴サービスを残したまま、それに加える形で、火曜から金曜日までの営業時間前を介護保険対象者へのサービスとして、福寿湯デイサービスセンターを開設しました。
利用者は、独り暮しや夫婦二人の高齢者世帯が中心で、家庭の風呂には人の手がないと入りずらい人がほとんどです。一見、元気な人が多いように思いますが、2度も倒れて両半身とも交互に麻痺になりリハビリ訓練を受けている人など様々です。利用時間は1日3〜4時間、毎日通う人もいますが、週に1〜2回の人が多く、1日平均5〜6人、およそ20人が利用しています。
それに対し、ヘルパー2級以上の資格をもつ介護スタッフ6人、看護婦3人でローテーションを組み、1日4人の介護スタッフに1人の看護婦で対応しています。5〜6人の利用者に、看護婦を含む5人のスタッフが対応にあたるという、まさにマンツーマンの形がとられているのです。地域に密着した風呂屋という既存のスペースを使うことで、こうした人の手による手厚い介護が実践されています。そのせいか、いくつかの施設のデイサービスに馴染めずに家にこもりがちだった人が、ここには楽しみに来るようになったそうです。
福田さんは、福寿湯デイサービスセンターを「必要なサービスを住民主体で作りあげていく」よい手本にしていきたいといいます。スタッフの報酬は、けして高額とはいえません。しかし、福田さんのボランティア精神に賛同し、同じようにお年寄りの世話が好きなスタッフが集まりました。工作や編み物をしたり、スタッフの美容師にシャンプーや髪の結い方などを習って実践するなど、常に新しさを加えながら手作りのプログラムを行っています。
福寿湯は、どこにでもあるような町の風呂屋です。大き
な設備があるわけでもなく、温泉が湧き出ているわけでもありません。しかし、ここにはそれらに勝るものがあります。人の気持ちの通った豊かな湯が、お年寄りの身体を温め、心を癒しているのです。