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  介護レポート

 

Report09 ★「食べる喜び」届ける訪問歯科診療 

取材協力★石川歯科医院  横浜市戸塚区川上町367-1 

 

 6年前、ミヲさん(88歳)は部分入れ歯の調子がおかしくなってしまいました。かかりつけの歯科医院に行きたかったのですが、足が不自由になってしまったため、入口の階段を昇ることができません。介護を担う嫁の力を借りても困難でした。そこで訪問看護婦に相談したところ、「家まで来てくれる歯科医がいる」ということがわかり、早速、訪問歯科診療を受けることにしました。

 歯科医は大きなバッグを持ってすぐにやってきました。バッグの中には、いろいろな診療器具が詰め込まれ、ミヲさんの部屋はアッという間に診療室に早変わりです。車イスのままで治療が始まりました。

 

 

 ミヲさんの歯は、上は右側、下は左側がなく、噛み合わせが難しい状態でした。それまで高価な金属のものを使用していましたが、残歯が少し欠けて不都合が起きていました。金属は、丈夫で残歯や歯茎にフィットするという利点があります。その反面、残歯や歯茎が変化したときに調整がしにくいという欠点を持っています。保険の範囲で作ることができるレジン(プラスティックに似た素材)は、脆いイメージがありますが、柔軟性のある特性を生かし、補修が容易にできるという利点があります。ミヲさんは、レジンを選び、部分入れ歯を新調しました。以来、口の中の変化にあわせて補修を重ね、同じものを使い続けています。

 今では大好きなおはぎを不自由なくペロリとたいらげているミヲさん。もちろん、食後の歯みがきは忘れません。そして、歯科医や訪問看護婦、通っているデイサービスの仲間たちとのおしゃべりがとても楽しいといいます。

 

 

 

 ミヲさんの主治医となった石川歯科医院の石川院長は、15年ほど前、近くの病院から事故で入院した人の歯の治療を依頼されました。その後、病院の入院患者や老人ホームなどの入所者を対象にした治療が次第に増えてきました。

 その中には、せっかく作った義歯が合わず使っていない人がいます。歯形をとって義歯を作ることは簡単ですが、それを体の一部として使いこなすためには、噛み合わせまでしっかりと調整し、口の中の変化に応じてケアしていくことが必要です。そこで退院後・退所後のケアを続けていくために、本格的な在宅患者の訪問診療を開始しました。現在では、一般診療とは別に、歯科医と歯科衛生士が組んだ在宅医療チームが、ほぼ毎日、年間1,500回以上出動しています。

 訪問時には、治療やケアをしながら、家族や患者にできることを指導しています。本人の状態に応じて、食べる姿勢や食べ方・飲み方の指導をはじめ、マッサージや嚥下訓練などのリハビリも取り入れています。単に悪いところを治療するだけではなく、食べる機能の維持・回復にも力を入れているのです。また、介護保険制度施行を機に、地域の介護関係者との情報交換により力を入れ、主介護者となる家族やホームヘルパーを対象に、介護講座も実施しています。

<ワンポイントアドバイス>

○食後・就寝前に、歯みがき・うがいをしよう
  食べカスが残らないようにする

○要介護者の口の中を毎日観察しよう
  汚れが残っていないか
  虫歯にかぶせた金属や義歯がしっかりついているか

○はずした義歯をよく調べよう(特に裏側は要注意)
  汚れが残っていないか
  ひびが入っていないか

○就寝時には義歯をはずして歯茎を休ませよう
  義歯は水につけて乾燥による変形を防ぐ
  針金で固定されている部分入れ歯は、
  針金のバネの部分を持つとはずしやすい
  義歯をはずす習慣のなかった人は無理をしないで、
  今日は下を、次の日をというように徐々にはずしていく

○麻痺がある場合
  麻痺側に汚れが残りやすいので、よくチェックする
  片麻痺がある場合でも、動く手を使って自分で出し入れしよう
  (手のリハビリになる)

○義歯を洗うとき
  洗面器などに水を張り
  落としても破損しないように工夫する