
施設の中はすべてオープンです。たまに、お茶目な人が小さなハプニングを起こすこともありますが、障害を持っている人も痴呆症と診断されている人も、同じフロアの同じスペースでのびのびと過ごしています。職員の目配り気配りに加え、お年寄り同士の互いへの思いやりが、徘徊などを起こしてしまいがちな痴呆症の人の問題行動を緩和しているのかもしれません。
1階は主にデイサービスの利用者が、2階、3階は入所者とショートステイの利用者が使用しています。ショートステイ利用者のなかにはデイサービスの利用者もいて、気が向けば各階へ降りたり昇ったり、お天気が良ければ中庭で気の合う仲間同士で日向ぼっこをする光景も見られます。海が近いので、心地よい潮風を感じることもできます。
入所者やデイサービス利用者の大半は、マグロ漁港で有名な三崎で産まれ育った地元の人です。漁船に乗っていた人、魚問屋、市場で働いていた人など町じゅうが家族のような土地柄、ときには幼なじみ同士で会話が弾むこともあります。日中、近所に住む家族や友人が自由に出入りし、差し入れを持って来たり、食事介助をしたりしています。施設に来るというよりはむしろ、サンダル履きでおじいさん、おばあさんの部屋に来たといった、距離を感じさせないシーンが日々、所々で見られます。
ここは、誰もが気軽に利用できる施設だけあって、閉じこもりからなる、寝たきり防止にも一役かっています。2年半前、脳梗塞で倒れ体の自由がほとんどきかなかったという信さん(76歳)。病院から退院後しばらくは家に閉じこもっていましたが、町の人に勧められ、週2回『はまゆう荘』のデイサービスに通うようになりリハビリ訓練を開始しました。マシーンと足首に重りをつけて歩く訓練を並行することで、ずいぶん足が軽くなり、ゆっくりですが、しっかり足を地につけて歩けるようになりました。また、痛くて上がらなかった手も、楽に動くようになりました。「ここは自由でいいよ」と、信さん流、指のリハビリにもなるという趣味の尺八を吹いてご満悦です。

倒れる前から趣味だったという尺八。手作りの尺八で、マイペースのリハビリをする信さん。

「足が曲がっちゃう」という愛さん。「大丈夫、ちゃんと訓練すれば真っ直ぐ歩けるからね」と、訓練士さん。

午後の中庭。入所者も通所者も職員も、海からの心地よい風を感じてくつろぐひと時。