PureCommunications,Inc.
   介護レポート

 

Report 12  ★食欲は人を元気にさせる! 

取材協力★特別養護老人ホームはまゆう荘 神奈川県三浦市三崎町諸磯1411-1 
http://www.hamayu-so.or.jp 

「食べたい」という欲求を叶えてあげたいと、平成11年に町の歯医者さんが特別養護老人ホーム『はまゆう荘』を開設しました。通院だけの治療では「食べたいものが食べられない」というお年寄りの不満を解消しきれないこともあり、これからの歯科医の在り方を模索しながらの挑戦です。

 『はまゆう荘』はショートステイ、デイサービス、在宅介護支援センターを併設しています。利用者は皆、毎食後必ず歯をみがくことが習慣になっていて、動ける人は食事が終ると自ら洗面台に移動します。入れ歯の人もうがいだけでなく、入れ歯を外して口の中も入れ歯も洗います。職員の手が必要な人も、身体の状況に応じてできることは自分でします。ケアスタッフの中には歯科衛生士もいて、職員一人ひとりに指導が行き届き、食後の口腔ケアをスムーズに行っています。また、設備の整った治療室もあり、週に5回歯科医師が訪問し、皆の口の中をチェックしたり、それぞれの部屋を見回ることもあります。歯科医院の院長を兼任している井上理事長も、皆の元気な笑顔を見ることが毎日の習慣になっています。

 

スポンジブラシを使って歯(歯ぐき)をみがいているトクヨさん。入れ歯のお手入れはケアワーカーさんに手伝ってもらいます。

自分の歯で食事をすませた房子さんは、歯科衛生士さんに念入りにみがいてもらいます。

 

 

入所しているキンさんの部屋に、歯科医の先生が定期検診にやってきました。

 

 施設を開設して3年、誤嚥性肺炎になった人はほとんどいません。口腔ケアが行き届いていることが、肺炎の予防につながっているようです。さらに、刻み食だった人が普通食を食べられるようになるなど、口の中の健康が保たれていると、食欲も出て来て、身心の健康にもよい影響がみられます。入所者約70名(ショートステイ16名)、通所者1日25名。およそ100人分の食事を担当しているのは、管理栄養士の吉本さんです。食べられるレベルに応じて、4段階の食事を用意します。「食べることは生きること、生きることは食べること」という視点で仕事に取り組み、皆の顔を見ながら、毎日の献立作りに趣向を凝らしています。

 

コロッケにひじきの煮もの、フルーツもあり「満足、満足」と吉臓さん。

 

 施設の中はすべてオープンです。たまに、お茶目な人が小さなハプニングを起こすこともありますが、障害を持っている人も痴呆症と診断されている人も、同じフロアの同じスペースでのびのびと過ごしています。職員の目配り気配りに加え、お年寄り同士の互いへの思いやりが、徘徊などを起こしてしまいがちな痴呆症の人の問題行動を緩和しているのかもしれません。

 1階は主にデイサービスの利用者が、2階、3階は入所者とショートステイの利用者が使用しています。ショートステイ利用者のなかにはデイサービスの利用者もいて、気が向けば各階へ降りたり昇ったり、お天気が良ければ中庭で気の合う仲間同士で日向ぼっこをする光景も見られます。海が近いので、心地よい潮風を感じることもできます。

 入所者やデイサービス利用者の大半は、マグロ漁港で有名な三崎で産まれ育った地元の人です。漁船に乗っていた人、魚問屋、市場で働いていた人など町じゅうが家族のような土地柄、ときには幼なじみ同士で会話が弾むこともあります。日中、近所に住む家族や友人が自由に出入りし、差し入れを持って来たり、食事介助をしたりしています。施設に来るというよりはむしろ、サンダル履きでおじいさん、おばあさんの部屋に来たといった、距離を感じさせないシーンが日々、所々で見られます。

 ここは、誰もが気軽に利用できる施設だけあって、閉じこもりからなる、寝たきり防止にも一役かっています。2年半前、脳梗塞で倒れ体の自由がほとんどきかなかったという信さん(76歳)。病院から退院後しばらくは家に閉じこもっていましたが、町の人に勧められ、週2回『はまゆう荘』のデイサービスに通うようになりリハビリ訓練を開始しました。マシーンと足首に重りをつけて歩く訓練を並行することで、ずいぶん足が軽くなり、ゆっくりですが、しっかり足を地につけて歩けるようになりました。また、痛くて上がらなかった手も、楽に動くようになりました。「ここは自由でいいよ」と、信さん流、指のリハビリにもなるという趣味の尺八を吹いてご満悦です。

 

 

倒れる前から趣味だったという尺八。手作りの尺八で、マイペースのリハビリをする信さん。

 

 

「足が曲がっちゃう」という愛さん。「大丈夫、ちゃんと訓練すれば真っ直ぐ歩けるからね」と、訓練士さん。

 

 

 

午後の中庭。入所者も通所者も職員も、海からの心地よい風を感じてくつろぐひと時。

Copyright by PureCommunications,Inc. 2002