
病院の看護婦を経て訪問看護ステーションで4年間働いていた向井マツ子さんは、昨年(2001年)の9月、ご主人の理解を得て夫婦が住んでいた自宅を建て増し、定員5名の「グループホームこぼれ陽」を立ち上げました。徳之島では最初のグループホームです。ホームヘルパーの資格をもつ長男夫婦の協力もあり、5人のスタッフで24時間365日体制を整え、交替でお年寄りと共に過ごしています。入居者は一人6畳ほどの個室に、衣類をはじめとした身の回りの小物やタンス、仏壇などを持ち込み、自宅と同じような環境にいます。
こぼれ陽では、日常生活の延長を重視した過ごし方をしているので、「〜をしましょう!」というような特別なプログラムはありません。まず、入居者一人ひとりが「何ができるのか」「何ができないのか」「何につまずいているのか」を見ていきます。できることは見守り、できないことはスタッフが行う、そしてつまずいていることは本人ができるように仕向けていきます。本人とのスキンシップ、家族とのコミュニケーションを十分にはかり、その人なりの生活暦をさかのぼって、 昔何をしていたのか、最近は何をしていたのかをスタッフ全員が把握しながら、ここでの新しい生活を始めていきます。起きたい時間に起き、眠りたい時間に寝る。自然のリズムで生活をするうちに体内リズムが整ってきたのか、最近では昼寝の習慣がつき、夜もぐっすり眠れるようになってきました。
また、待つゆとりを心がけ、目を配り、見守っているうちに、入居者の少し変わった行動にはワケがあることも少しずつ分かってきました。限られた時間の中で訪問看護をしていた向井さんにとって、動作一つひとつの謎が解けることは、24時間本人とかかわることで見えてきた最も大きな発見だそうです。
一部の病院や施設では、本人に尿意や便意があっても人手不足などの問題で、安易にオムツをつけられ、ベッドに寝かせたきりにさせられてしまう場合もあります。その不快さの表れが、俗にいわれる痴ほう症患者の異常行動として扱われてしまうこともあるようです。こぼれ陽ではトイレに誘導することで、オムツはずしに成功しています。入居者が尿意や便意を取り戻していく姿を間の当たりにし、「失禁は介護の怠慢」といわれる言葉が適切であることを強く感じるようにもなったそうです。
入所当時は車椅子を使ったり、食事介助を必要とした人もいますが、今は手すりや杖を使って全員が室内を自力で移動しています。食事も箸を握り、ペースはそれぞれですが、特別な介助は必要なくなりました。要介護の認定も4から3へと軽くなったケースもでています。日々の生活がリハビリになり、仲間同士がよい刺激になっているようです。