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   介護レポート

 

Report15 ★歯科版・訪問看護ステーション「まほろば」 

取材協力★まほろば 奈良県奈良市あやめ池南3-2-45-514 

 

 「まほろば」を立ち上げ当初から応援している歯科医師の諸井先生は、「歯科医師は食べるための道具である“歯”を整えてくれます。しかし、舌の動きが悪いと口の中で食べた物がバラバラしたままで、うまく噛むことはできません。また、麻痺などで唇を閉じることができなければ食べこぼしや飲み込みも困難。このように口腔機能、摂食・嚥下の一連の機能に障害がある人が『食べられるようになる』までには、継続した口腔ケアや口腔リハビリがとても大切です。」といいます。

 しかし、歯科衛生士が歯科医のもとで働く場合、口腔ケアは治療期間中だけで終わってしまうことが多くあります。5年前、「歯科衛生士として、生活者の場で生活者の目線で口腔ケアや口腔リハビリをしたい。ご飯が食べられるようになるところまできちんと見届けたい。」と思った渡邊さんは、歯科衛生士5人でグループ「まほろば」を立ち上げました。現在は、歯科医師と連携して口腔ケアと口腔リハビリを専門に活動しています。 

 特別養護老人ホーム「やすらぎ園」に入所している大石 染さん(96歳)は今、「まほろば」の歯科衛生士、谷さんから顔のマッサージを受けています。歯科衛生士にしてもらうことといえば、歯垢や歯石を取ってもらったり、歯磨きをしてもらうだけだと思っている人も多いと思いますが、「まほろば」のそれは大分違います。はじめに、肩や首、顎、頬、唇などを丁寧に時間をかけてマッサージします。マッサージで刺激することによって唾液の量が多くなったり、もとの機能が徐々に回復するのです。会話のできない染さんですが、谷さんがやさしく話しかけながらマッサージをしていると、喉の奥を鳴らして何かいいたそうです。谷さんが初めて染さんに会った頃は、首が拘縮し嚥下体操で首を回したり顔を横に向けたりすることさえ難しい状態でしたが、谷さんや介護士による日々のケアで次第に首が回るようになりました。

 マッサージが終わり、十分にリラックスしたところで口腔ケアに入ります。スポンジブラシで唇を湿らして口の中に残っている食べ物のカスを取り、歯ブラシで磨き、舌苔を取り除き、歯間ブラシで歯の間をきれいにします。その後、冷たい巻き綿で喉の奥を刺激し、口の中の乾燥を防ぐため口や唇に保湿剤を塗ります。口腔ケアを受けた染さんはすっかり気持ちよくなって寝入ってしまいました。その人の障害の場所や体調などに応じてメニューは異なりますが、「まほろば」では一人にたっぷり30分〜60分は時間をかけるそうです。

 

 

 在宅で訪問看護や訪問入浴を受けている人、施設に入所してきちんと介護を受けている人でも、口の中はケアされず大変な状態になっている人が大勢います。口から食べられない経管栄養の人、合わない義歯のため舌に大きな褥瘡を作っている人、麻痺があり舌が上手に使えず食べ物の残りカスがべったり貼りついている人、口腔乾燥で口の中が赤く干からびている人などその症状は様々です。これらの症状に対して、1日に1回でもきちんとした口腔ケアをすることで口の中は見違えるほど変わります。口の中を刺激することで今まで使っていなかった機能が回復し、口から食べられなかった人が食べられるようになったり、顔の表情が戻ってきたりします。口の機能だけでなく、本人の気持ちや身体全体にも少しずつ変化が現れてくるのです。

 今まで、口腔ケアに料金を払うという概念が全くなかった利用者に、「気持ちよかった。これだけの料金を払うのは当然」と思ってもらえるよう、「まほろば」では日々サービスの向上を目指して取り組んでいます。その結果、最初は2人だった利用者も今では在宅、施設を合わせ340人にまで増えました。

 渡邊さんは「入浴サービスも気持ちのよいものですが、私たちのケアも優るとも劣らない気持ちよさを提供しています。」といいます。しかし、それだけではありません。障害児のお母さんが「キャンプや温泉に行きたいけれど・・・」といえば、早速、キャンプと温泉のツアーを企画して皆に声をかけ、バスを借り切って実行したり、天気がよい日には「今日は気持ちがいいから外に行こう!」と利用者を外に連れ出したりします。患者の気持ちを汲んで行動に移すことができる、ここが「まほろば」のセールスポイントです。

 「まほろば」の口腔ケアの実績が上がるにつれ、「私のホームにも来て口腔ケアをして欲しい」「介護スタッフに口腔ケアを習得させたいので講習会を開いて欲しい」「『まほろば』のようなグループを作りたいので、そちらで勉強させて欲しい」などの要望も各地から寄せられるようになりました。昨年からは、週に1回三重県美杉村にある特別養護老人ホーム「笑美の里」まで往復5時間かけて指導に行くようにもなり、「まほろば」に研修に来たいという人たちにも広く門戸を開いています。これからの歯科医師と衛生士は連携して、院内に留まらず在宅や施設などへ積極的に出向き、ケアを必要とする人たちを支援していく必要があります。「まほろば」では、これからも自然な形で今まで以上の手厚いサービスが提供できるよう努力していきたいと考えています。

                     

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