
在宅で訪問看護や訪問入浴を受けている人、施設に入所してきちんと介護を受けている人でも、口の中はケアされず大変な状態になっている人が大勢います。口から食べられない経管栄養の人、合わない義歯のため舌に大きな褥瘡を作っている人、麻痺があり舌が上手に使えず食べ物の残りカスがべったり貼りついている人、口腔乾燥で口の中が赤く干からびている人などその症状は様々です。これらの症状に対して、1日に1回でもきちんとした口腔ケアをすることで口の中は見違えるほど変わります。口の中を刺激することで今まで使っていなかった機能が回復し、口から食べられなかった人が食べられるようになったり、顔の表情が戻ってきたりします。口の機能だけでなく、本人の気持ちや身体全体にも少しずつ変化が現れてくるのです。
今まで、口腔ケアに料金を払うという概念が全くなかった利用者に、「気持ちよかった。これだけの料金を払うのは当然」と思ってもらえるよう、「まほろば」では日々サービスの向上を目指して取り組んでいます。その結果、最初は2人だった利用者も今では在宅、施設を合わせ340人にまで増えました。
渡邊さんは「入浴サービスも気持ちのよいものですが、私たちのケアも優るとも劣らない気持ちよさを提供しています。」といいます。しかし、それだけではありません。障害児のお母さんが「キャンプや温泉に行きたいけれど・・・」といえば、早速、キャンプと温泉のツアーを企画して皆に声をかけ、バスを借り切って実行したり、天気がよい日には「今日は気持ちがいいから外に行こう!」と利用者を外に連れ出したりします。患者の気持ちを汲んで行動に移すことができる、ここが「まほろば」のセールスポイントです。
「まほろば」の口腔ケアの実績が上がるにつれ、「私のホームにも来て口腔ケアをして欲しい」「介護スタッフに口腔ケアを習得させたいので講習会を開いて欲しい」「『まほろば』のようなグループを作りたいので、そちらで勉強させて欲しい」などの要望も各地から寄せられるようになりました。昨年からは、週に1回三重県美杉村にある特別養護老人ホーム「笑美の里」まで往復5時間かけて指導に行くようにもなり、「まほろば」に研修に来たいという人たちにも広く門戸を開いています。これからの歯科医師と衛生士は連携して、院内に留まらず在宅や施設などへ積極的に出向き、ケアを必要とする人たちを支援していく必要があります。「まほろば」では、これからも自然な形で今まで以上の手厚いサービスが提供できるよう努力していきたいと考えています。